Case4.賛成が多数なら拡大。多数でなくても拡大(大阪市交通局)
2003年、大阪市交通局は専用車についてのアンケートを実施した。
ちなみにこの時点での大阪市交通局の専用車は御堂筋線に初電~9:00という設定である。
アンケートの内容は主に設定内容やその変更への賛否を問うものだったのであるがその設問自体が拡大を誘導するように仕向けられていた。
例えば専用車の設定時間帯についての質問の場合、「朝・夕」や「終日」といった拡大に関する選択肢ばかりで「縮小」や「廃止」と言った選択肢は含まれていなかった。
これだけでも大阪市交通局が拡大ありきであることが窺えるが、その後の動きが輪を掛けて不信感を与えるものであった。
アンケートの結果は「他の時間帯への導入」の項目で「今のまま(=朝ラッシュ時のみ)で良い」が27%で最も多くなった。
しかも先に述べたように「縮小を希望する」「廃止を希望する」という選択肢は無かったので、この「今のまま」の中には実際には縮小or廃止派である者が多分に含まれている可能性が高い。
即ち“反対票に近い「今のまま」”であると言える。
ちなみに「終日化を希望する」は11%だった。
一方、「他路線への導入」に関しては谷町線の項目で「拡大を要望する」が64%となった。
大阪市議会(正確には市議会の推進派議員)はかねてから御堂筋線の専用車を終日化する意向を見せていたが「時間帯の設定は現状のままで良い」という回答(繰り返し言うが、縮小・廃止についての選択肢がない上での「現状のまま」である)が多数になったアンケート結果によってさすがに終日化を見送ることになるのかと思っていた。
ところが、アンケート結果発表の末尾は「来年度の終日化実施を目指して更なる検討を進める」旨のコメントで締めくくられていた。
そして、他線への拡大に関しては「谷町線の実施要望が64%、女性では75%あり、谷町線においてニーズがあると推測された」として、このアンケート発表から僅か1ヵ月後の2003年12月15日にはさっそく谷町線に専用車を導入している。
そして翌2004年8月20日、それまで動きが無かった大阪市交通局が突然9月6日に御堂筋線の専用車を終日化すると発表した。
翌21日に別件で大阪市内へ行ったのだが御堂筋線梅田駅には既に終日化を伝えるポスターやパンフレットが用意されていた。
まさに終日化は既定路線だったわけだ。
ところで、最近の東京メトロでも感じることだが専用車に熱心な事業者、そして現場の混乱や過剰設定等の問題を指摘されかねない設定となる路線ほど実施の約2週間前というギリギリのタイミングまで引っ張ってから発表しているように思う。
これは「専用車導入・拡大回避の可能性を最後まで探っていた」という好意的な解釈も出来ないことはないのだが、やはり「批判されるのを先延ばしにするため」「後戻り出来ない段階で発表すれば、『もう決まったことだから』と反対の声を突っぱねられるため」と考えた方がしっくり来る。
専用車に関するアンケートはもはや専用車の是非を問うものではなく、「利用者の意見は聞いた」というアリバイ作りと本格運用化や拡大のための口実、批判意見に対して「支持は得ている」という封じ込めを行なうために利用されている。
いや、このケースでも分かるようにもはや「支持は得ていない」ことすら無関係に専用車の拡大を行なうのである。