Red Bear

Case3.痴漢被害増加は勇気のしるし!?(名古屋市交通局・西鉄他)

読者の中には専用車の導入に対して「痴漢被害が減って一定の成果が得られれば専用車は終了するのだろう」、あるいは「とりあえず実施してみて、大した効果が出なければ打ち切るのだろう」と考えているものもいるかもしれない。

しかし、冒頭に記したように専用車を廃止させたところは車両運用の都合による富士急の1例しかない。

現在通勤列車で行なわれている専用車のうち、比較的早い時期に導入された京王電鉄(2000年12月)やJR東日本(2001年7月)、横浜市交通局(2003年3月)や関西各事業者(2002~2003年)などは既に何らかの結果が出ているはずだし、30を越える事業者で専用車を実施すれば地域性や路線事情も異なるのにその全てでうまくいくとも思えない。

にも関わらず、「痴漢問題が解消されたので専用車は晴れて終了」にせよ「効果が得られなかったので専用車は中止」にせよ専用車をやめる結論を出した事業者はいない。

というより、Case1,2でのアンケートの解釈と同様、専用車の効果に対しても存続ありきの解釈が行なわれている。

まず、警察や駅への痴漢被害の届出が専用車導入前よりも減少した場合。

これは単純に「専用車の導入によって痴漢被害を防ぐ効果が得られた。」と解釈される。

それなら「痴漢被害が減るのならいずれは専用車が不要になる。」のかと思いきや、さにあらず。

事業者は「専用車があることで得られる効果であり、もし専用車をやめたら元の木阿弥になる。」と考えるのである。

むしろ「効果があることが分かったので他の路線・時間帯にも専用車を拡大する」と専用車拡大の口実となってしまう。

一方、被害件数が増加した場合。

ところで、ここで痴漢被害が減少とか増加とか書いているがこれは何も事業者側が専用車導入前後の被害件数の詳細を発表しているわけではない。

新聞記事等で時々専用車の話題が取り上げられた際に、「導入後、被害届出件数が減少した」といった感じの漠然とした記述が出る程度である。

不思議なことに事業者は詳細な統計の発表は行なっていない。

本当に「御理解と御協力」を得たいのならそういった情報公開は不可欠のはずなのだが。

話が逸れたが、専用車導入後に痴漢被害届出件数が増加した事例もいくつか起きたらしい。

それが偶然によるものか専用車がマイナスに作用したのかははっきりしない。

ソースは不明であるが、名古屋市交通局でそのような現象が起きたことが報道されたらしい。

そしてそれの記事の中で事業者側が出したコメントが「専用車をはじめとする痴漢問題への取り組みが、被害者に被害を告発する勇気をもたらしたから。」という驚くべきものであった。

西日本鉄道や横浜市交通局でも同様の現象と発言があったと聞く。

また、大阪市交通局が御堂筋線の専用車を終日に拡大した時に私は専用車推進派の某市会議員に抗議電話をしたことがあるのだが、そこで「御堂筋線に専用車を導入後、却って被害が増えたと聞いた」という話をしたら、やはり「それは被害を訴えやすくなったから」という発言が出た。

「専用車導入で痴漢被害件数が増えたのは勇気が付いたから」という突拍子のない解釈がこれだけ異なる地域と組織の人間から揃いも揃って出るということはやはり業界ぐるみで専用車の延命を図っている証拠であろう。

第一、もし被害件数が減ったという結果が出ていれば「専用車の(直接的な)効果が得られた。このまま継続しよう(拡大しよう)。」と言っていたことは間違いない。

予言の手品に次のようなものがある。

『手品師が選択肢のある質問を行なった後、その回答を予言して紙に書いて隠しておいたことを告げる。

指定した場所に隠してある紙を見るとどの回答を選ぶかを的中させた内容だった。

手品師には回答を聞いてから紙を仕込む時間は無かったはずなのに』というものである。

実は選択肢の数だけ予言した紙が用意してあって、それぞれ異なった場所に隠しておく。

そして相手の回答が出た時に初めて(的中した内容の)隠し場所を指示するから“的中”するのであるが、「勇気が付いた」発言のことを知った時、この手品を思い出した。

あらかじめ「1年後には痴漢被害を30%以下にする」といった目標設定や「被害件数が月10件以下の状況が6ヶ月以上続いたら専用車は終了、そうでなければ継続」といった専用車の存続・廃止の条件を告知しておくのではなく、実際に起きた結果を見て「専用車存続・拡大」という結論を得るための解釈を引き出すところが相手の回答を知った後で予言の隠し場所を教えることで“的中”させるやり方とよく似ている。

Case1,2の「アンケートで賛成多数なら専用車継続、反対多数なら調査方法に問題」今回の「痴漢被害件数が減少すれば被害を抑える効果、増加すれば告発を促す効果」の他にも事業者はあらゆる“予言”を仕込んでいる。

例えば、

●専用車導入前の痴漢被害が元々多い→被害が多いから専用車が必要

●専用車導入前の痴漢被害が元々少ない→届出の出ない被害もあるので専用車が必要。または数が少なくてもそういった人のための保護は必要。

●導入対象となる路線や時間帯の混雑度が高い→痴漢被害が多くなってしまうから専用車が必要
●導入対象となる路線や時間帯の混雑度が低い→混雑が少なくても痴漢被害はある。または盗撮・酔客の問題がある。

●周囲に専用車導入済みの事業者が多い場合→昨今の傾向に合わせて自社も追随
●周囲は専用車を導入していない、または設定時間や対象列車が少ない場合→他社には他社の考えがあってのことであり、自社とは無関係

●アンケート等で専用車の拡大を要望する意見が多数を占めた→そのまま拡大
●アンケート等で専用車の拡大を要望する意見はそれほど多く出なかった→専用車の必要性を考えると拡大の検討をする必要がある

最後の「アンケート等で専用車の拡大を要望する意見~」については、大阪市交通局にその事例があるので、次はそれについて述べていきたいと思う。

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