Red Bear

Case6.埼京線は被害減少、中央線は被害増加。
さあ、どうする?(JR東日本・京王)

2006年8月8日の朝日新聞夕刊にこんな記事が載っていた。

要約すると、

警視庁は2005年の東京都迷惑防止条例での検挙件数が中央線217件(前年より29件増加),埼京線164件(同53件減少),京王線146件(同25件増加)と発表。

この結果を受けてJR東日本は、埼京線の被害減少については専用車の効果が出たと胸を張る一方、中央線の被害増加については理由は定かではないといっている。

また京王電鉄は(自社線の被害増加の原因は)女性が泣き寝入りしなくなったから被害が表面化してきたと分析している

というものだった。

この記事はまさに事業者の「専用車は継続・拡大ありき」の体質を端的に示している。

この3路線の専用車はいずれも取りやめになることはないだろう。

専用車導入後、迷惑防止条例での検挙件数が減った路線は「専用車の効果が現れた。ここでやめてしまったら元の木阿弥。」、減らなかった路線は「原因を確かめるために暫く様子を見てみたい。」という理由でそのまま継続される。

あるいはCase3で指摘したように、痴漢被害が増加したことに対して「告発する勇気が出た」と自分達の施策にポジティブな評価を出して何の是正や改善措置も行わないのである。

埼京線の件数減少を専用車の実施による効果であるとするのなら、被害の増えた中央線と京王線は専用車の効果が無かった、あるいは逆効果だということになる。

結果が正反対の路線で両者共に専用車を継続させるのは無理があるから普通に考えれば効果の無かった中央線・京王線では専用車を廃止、少なくとも縮小か何らかの見直しを検討せねばならないということになるだろう。

一方で告発する勇気が出たから専用車は有意義だとするのなら、検挙件数の減った埼京線は失敗だったということになる。

もし京王線で検挙件数が減少していたら、京王電鉄は「却って被害の告発がしにくくなった。悪い結果だ。」と判断していたのだろうか。

それに告発する勇気が出ただけなら被害そのものは減っていないということだから、長期的には被害が減少するにせよ、しばらくの間は痴漢に遭うことを我慢しろということになってしまう。

そもそも検挙件数の増加を「告発する被害者が増えた」と解釈するのであれば、専用車導入の根拠となった「近年、痴漢被害検挙件数が著しく増加している」という現象自体の意味合いが変わってしまう。

この解釈でいけば「被害をしっかり訴えられるようになっているのだから好ましい」となるはずであって、専用車のような大掛りな対策になど結びつくはずがない。

検挙件数が増えたことへの対策によって検挙件数が更に増えたというのに、それでポジティブな評価を下すのだから恐れ入る。

結局、Case3や今回の京王のように「検挙件数が増えたのは告発する勇気が付いたから」と解釈してしまうと専用車の存在自体が矛盾したものとなってしまう。

埼京線で検挙件数が減少したことにしても湘南新宿ラインの増発で混雑が緩和された、あるいは痴漢被害ワースト1路線ということで鉄道・警察関係者や利用者が特に警戒するようになったという要因だって考えられる。

検挙件数減少に対しては専用車の実施のおかげと即断するのに反対の結果だととたんに言葉を濁して原因を判断出来ないのはどうしてだろうか。

大体、専用車を「痴漢被害の発生を起きにくくするもの」なのか「被害自体は防げないが、被害をあぶり出すことで将来的には被害の減少につながるもの」なのかの位置付けを最初からはっきりさせていれば成功・失敗の判断がぶれることはないはずである。

このような判断から「専用車は廃止されることなく継続している。それだけ効果や支持があるのだろう。」という錯覚が生まれるのだから恐ろしいことである。

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