2021年3月 当会からの質問状に対する熊本市交通局の回答および熊本市議会議事録について

熊本市交通局は2020年9月より試験導入している女性専用車両を2021年1月から「女性優先車両」と改称の上、2021年3月末まで試験導入を延長(4月から正式導入)しましたが、ここでは昨年(2020年)12月7日に当会が熊本市交通局を訪問・抗議を行った際にこちらから提出した質問状に対する交通局からの回答を公開します。

交通局は女性専用車両の導入理由を「痴漢や盗撮等の迷惑行為防止の取り組みの一環」としていますが、最近(今年3月)になって市議会議事録に交通局の管理者による「市電としてもコロナウイルスでこれだけ人が減っておるという中で、いろいろな話題を提供したい、明るい話題を提供したいという中で・・・(中略)・・・女性専用車両というのを導入したらいかがかなというところで一つアイデアが出ました。」という、昨年9月の答弁が記載されているのが発見されました。

昨年9月の答弁がなかなか公開されず、女性専用(優先)車両の導入が本決まりになった今頃になって公開とはどういうことなのでしょうか。

熊本市電の女性専用(優先)車両は感染症流行による減客・減収対策だった

昨年12月に当会が提出した質問状に対する、交通局の回答

当会は昨年(2020年)12月7日に、関東・関西・名古屋・福岡など、全国から集結した会員が熊本市交通局を直接訪問して抗議活動を行ったが、その際提出した質問状に対する交通局からの回答をここに公開する。

<質問1>
首都圏で女性専用車両をめぐる事件(東京メトロ千代田線における緊急停止等)が起きてニュースになったことにより社会問題になったり、COVID-19(以下、新型コロナウイルス感染症)で混乱しているこの時期にわずか2両編成の列車に女性専用車両をなぜ試験導入したのでしょうか。

【回答】
市電車内で痴漢や盗撮等の迷惑行為が毎年発生しており、その被害を受けるおそれのある女性のお客様に対し、少しでも安心して利用できる環境を提供するために導入いたしました。

<質問2>
当初どのような経緯で 「女性専用車両」を導入しようという話が持ち上がったのでしょうか。 外部(政党など)から犯罪対策として「女性専用車両」の提案、要請があったのでしょうか。 また、いつから「女性専用車両」が検討されているのでしようか。

【回答】
女性優先車両の導入については、日頃、利用者と直接応対する乗務員から提案があり、 令和2年度 に入って検討を行い、9月14日から試験導入することといたしました。なお、外部(政党)からの提案、要請はございません。

<質問3>
他事業者ではラッシュ時などでの安全確保の問題や車両による混雑差が激しくなるなどの理由から、短編成での導入はしていませんが、貴局がわずか2両編成の列車における導入でも問題ないと判断した理由は何でしょうか。
また、昨今では様々な場面で「三密」防止策について試行錯誤しているところなのに、明らかに「三密」を招くと思われる「女性専用車両」の導入について貴局内では疑問や不安の声が出なかったのでしょうか。

【回答】
車両による混雑状況の不均衡については、事前に車内カメラで確認したところ、男性と女性の乗車人数が概ね均衡していたことから、導入によって混雑差が相当激しくなることはないと判断いたしました。
ただし、導入前に懸念された課題の確認や利用者ニーズの把握を行う必要があるために試験導入いたしました。

<質問4>
貴局のHPでは新型コロナウイルス感染防止対策の一環として過去の「混雑度状況」をまとめた一覧を閲覧出来るようになっているが、これは列車内の混雑度と新型コロナウイルス感染症増加の危険性のつながりを認識しているからではないのでしょうか。

【回答】
新型コロナウイルス感染防止のためには、咳エチケットや手指衛生等に加え「密閉」「密集」「密接」のいわゆる3密を避けることが重要だと認識しております。
公共交通機関においては、社会的距離を保つことは困難であることから、乗務員の体調管理やマスク着用をはじめ、車内換気や定期的な消毒など様々な感染予防対策に取り組み、お客様が安心して利用できる環境づくりに努めているところです。
車内の混雑状況の公表については、時差出勤やお客様自身で混雑を回避したい場合の参考情報とてご活用いただくために公表しております。今後も、車内の抗菌 抗ウイルスコーディングや抗菌吊手の導入、一部車両の座席改修など、 更なる感染防止対策に努め、お客様が安心して利用できる環境を提供してまいります。

<質問5>
後述のデーターをみれば、性別によらない犯罪防止策が重要であると思うところですが、女性専用車両により隣の車両が混雑すれば男性の性被害を増やす恐れがあると考えられるが、そこはどのように考えておられるのでしょうか。
男性の性被害を生まないようにする為の施策の考えはあるのか?

『「青少年の性行動全国調査報告書2011」』より
(電車の中などで身体を触られる迷惑行為を受けた男性) 男子中学生1.2%/男子高校生2.5% /男子大学生 6.4%

【回答】
車両による混雑状況の不均衡については、事前に車内カメラで認したところ男性と女性の乗車人数が概ね均衡していたことから、導入によって混雑差が相当激しくなることはないと判断し、試験導入を行いました。
試験導入期間中の調査結果では、車両による混雑状況の不均衡については導入前後で大きな変化はありませんでした。
性別にかかわらず、痴漢や盗撮等の迷惑行為防止対策については、全車両に車内カメラを設置しており、利用者に車内カメラの搭載について強く認識してもらえるようわかりやすい表示に改めるとともに、車内放送を活用した防犯啓発にも取り組んでまいります。

<質問6>
9月11日付のFNNプライムオンラインの記事によれば「それまで一緒に乗っていた男女が別々になるだけ」「他の時間に利用していた女性が女性専用車両に乗りたいと考えることで、女性専用車両の混雑率が上がるかも知れない」という貴局のコメントがありますが、これらのコメントは事実ですか。 事実であれば、既に導入された路線で女性専用車両があるために他の車両が混み合うことが問題視されていたのを知らなかったのでしょうか。

【回答】
記事のコメントについては、交通局で回答したもので間違いございません。 既に導入された路線での混雑状況について、詳細までは把握しておりませんが、車両による混雑状況の不均衡については、事前に車内カメラで確認したところ、男性と女性の乗車人数が概ね均衡して いたことから、導入によって混雑差が相当激しくなることはないと判断し、試験導入を行いました。

<質問7>
また前述の質問から、女性専用車両を設定すると他の時間帯に利用していた女性客がわざわざ乗る時間帯を変えてまで乗りたがり、女性専用車両が混雑すると本当に考えていたのでしょうか。

【回答】
女性優先車両を運行している時間帯において、市電は約3分間隔で運行しております。そのため、女性優先車両の前後をご利用いただいている女性のお客様が、時間をずらしてご利用される可能性もあると考えておりましたので、試験導入期間中に一部の電停カメラで確認したところ、 到着した電車を1本見送り、次の女性優先車両にご乗車されているお客様を確認しております。

<質問8>
女性専用車両導入の目的について、痴漢対策(貴局ホームページより)と言いつつ実は女性のみの満足度向上サービスとして捉えているのではないでしょうか。

【回答】
導入日的についでは、質問1の回答のとおりです。

<質問9>
当局において、女性専用車両の導入の前後での痴漢被害の認知件数の増減について公表する予定で しょうか。

【回答】
市電車内における痴漢、盗撮等の迷惑行為の年度別推移について公表する予定です。

<質問10>
近年、性的少数者(「LGBT」などと一般的に呼ばれています)の人権を尊重しようとする動きが広まっており、熊本市においても「熊本市パートナーシップ宣誓制度」を開始し、文化市民局人権推進部において「性的マイノリティサポートハンドブック(「サービス業向け」及び「医療従事者向け」)」を作成するといった動きがあります。

「LGBT」の「T」にあたるトランスジェンダー(性自認と身体的な性が一致していない方)の方の中には、性自認が女性である一方で身体的な性別が男性であること等により女性専用車両に乗ること、および女性専用車両そのものに強い抵抗感がある方もいます。昨年には、女子大学が戸籍上男性であっても性自認が女性である人を受け入れることに対して、一部のフェミニストを名乗る人物により、「女性専用スペースに入ってくる「生物学的に男の人物を排除しよう」などと、トランスジェンダーの人々に対する攻撃が行われるといった問題がありました。

熊本市が作成した前述のサービス業向け性的マイノリティサポートハンドブックにおいて、「こんなことばを使ったり聞いたりしたことはありませんか?あの人って、男なの?女なの?」といった記述があり、また「だれでもトイレ」の確保や「性別限定のサービスの見直し」といった対応を求める記述がありますが、いわゆるトランスジェンダーの方の中には、女性専用車両を利用するうえで性別を詮索され、本人のプライバシーを毀損するといったことも考えられます。

貴局において、女性専用車両の導入にあたり、性的少数者、とくにトランスジェンダーの方々の人権についての議論は行われたのでしょうか。

【回答】
痴漢などの被害にあうのは女性だけでなく、男性や性的マイノリティの方もいることから、今回の女性優先車両の導入で全ての痴漢犯罪を抑止できるわけではなく、それぞれの性的志向によって、男性と女性という分け方をするだけでは、対応が充分でないことは理解しております。

そこで、熊本で活動するLGBT団体(セクシュアルマイノリティにとっても住みやすい熊本にするために活動する団体グループ)に対し、女性優先車両についてのご意見を伺ったところ、女性が被害者になる可能性が高い性暴力から守るために設置に至ったということについて理解しているとの意見をいただきました。
また、性的マイノリティの観点では、トランスジェンダー女性は性暴力被害を受けることが多いため、法律上の性別だけでなく、性暴力被害を受けやすい方が安心して利用できる対応をお願いしたいとの意見もいただきました。

そこで、試験導入期間の延長に合わせて、任意協力とわかりやすい女性優先車両に表現を改め更に、車内にカメラを設置していることを利用者にわかりやすく表示したり、車内放送等を活用した防犯啓発にも併せて取り組んでいくことで、女性優先車両を利用される方も、利用されない方も性暴力を受けることなく、安全、安心に利用できる市を目指してまいります。

<質問11>
過去の事例から「女性専用車両」に協力するのは当然とする人達が様々な理由にて「女性専用車両」に乗る男性乗客へ侮辱や暴言暴力などの加害行為を行ったり、盗撮してSNSに拡散するなど、大衆へ批判を浴びせるように仕向け、場合によっては名誉毀損や差別、最悪個人情報を特定して脅しをかける恐れは十分に考えられます。
そのことについては貴局はどう考え、どう対処されるおつもりでしょうか。

【回答】
他人に対し、侮辱や暴言、暴力などの加害行為等については、刑法、軽犯罪法、各都道府県迷惑行為等防止条例等の規定に反する行為であると認識しています。交通局では、女性優先車両の全車両に車掌(職員)を配置し、車掌には、女性優先車両は任意のご協力のもと成立しているものであり、強制ではないことを車内アナウンスすることや女性のお客様が男性のお客様に対し、車両を移るなどの声かけを行った場合は速やかに女性のお客様を制止することなどを指導しております。
また、名称についてもより任意協力とわかりやすい女性優先車両に表現を改めます。

<質問12>
近年は「何をもって男性/女性とするのか」という部分で多様性が重要であると考えられ 外見的な部分でも配慮が必要であるとされる中、一口に「障がい者」といっても、貴局がイメージしている障がい者は「身体障がい者」であるようにしか見えない。
身体障がい以外にも知的障がい、発達障がい、 難病の人など、種々のハンデを持つ人が存在し、妻による介助が必要な高齢男性、小さな子供を連れた父親などもハンデを持っていますが、そうした人々の存在への配慮について、 どう思われていますでしょうか。

【回答】
交通局では高齢者・障がい者・体調不良者・妊婦・乳幼児連れのお客様など様々な方が安心してご利用いただけるよう全車両に優先席を設置するなどの対応を行っております。

<質問13>
貴局ではアンケートを取って本格導入するかどうか決めるとのことですが、アンケートを取った結果、どのような基準で本格導入の有無を判断するのでしょうか、「賛成反対がそれぞれ過半数を越えたら」なのか、もしくは他に基準があるのか、または特に基準はないのでしょうか。 また、アンケートはどのような形式で、どのような対象(人数・男女比・乗客のみか、それ以外も合めてか)に対して行うのでしょうか。

【回答】
利用者アンケートについては、11月に実施し、別紙のとおりの結果となっております。 なお、今回、女性専用車両の試験導入については、当初、令和2年(2020年)12月28日(月)までとしておりましたが、本格導入に向けてさらに多くの利用者のご意見を伺い検討を深める必要があると判断し、試験導入を令和3年(2021年)3月31日(水)まで延長することといたしました。
また、延長にあたっては、これまでいただいたご意見を踏まえて、より任意協力とわかりやすい「女性優先車両」に表現を改めます。加えて、女性優先車両の導入だけで迷惑行為を防止することは難しいため、車内カメラの搭載について、利用者に強く認識してもらえるようわかりやすい表示に改めるとともに、車内放送等を活用した防犯啓発にも取り組んでまいります。なお、本格導入については、利用者アンケートにより半数以上の賛成が得られる事を一つの目安として、利用者の意見等を踏まえ総合的に判断することとしております。

その後、市議会議事録に女性専用(優先)車両導入の本当の理由が・・・

これまで交通局は繰り返し「女性専用車両の導入はこれまで痴漢盗撮等、迷惑行為対策に取り組んできたが効果が現れなかったために今回踏み切ったもの」と強調してきた。

そしてこれまで当会では市議会で何らかのやり取りがあったのではないかと、昨年9月ごろから12月ごろまで何度も市議会議事録検索サイトで「女性専用車両」のワードで検索をかけていたのだが、何度やっても「該当する発言は存在しませんでした」と表示され、全く市議会でのやり取りがつかめなかった。

ワードを「女性優先車両」などに変えてもやはり同じであった。

”古庄発言”から3か月経った昨年12月の時点でも全く議事録に掲載なし。

しかし今年の3月になって、女性優先車両の正式導入が発表されたので「またどうせ検索してもなにも引っかからないだろうな」と思いつつも一応、市議会議事録検索サイトで検索をかけたら出てくる出てくる・・・

それも半年近く前の昨年9月の市議会でのやり取りが。

今まで何度検索しても全く何も出てこなかったのは一体何だったのだろうか?

実は昨年9月に先ほどの当会の意見書への回答でも名前が出てきた、交通局管理者の古庄修治氏が市議会でこんな答弁をしていたのである。

(令和 2年第 3回都市整備分科会-09月17日-01号)

私も現場の運転手さんたちのいろいろな意見を聞きたいということで、その中で一つ市電としてもコロナウイルスでこれだけ人が減っておるという中で、いろいろな話題を提供したい、明るい話題を提供したいという中で、アイデアの一つとして、特に女性は通学が多いです。通勤が男性が多くて大体比率が1対1ぐらいになっているそうで、だからそういう女性の通学の女学生、高校生とかそういったところの人たちに快く乗ってもらうためにも、女性専用車両というのを導入したらいかがかなというところで一つアイデアが出ました。

http://kumamoto.gijiroku.com/voices/cgi/voiweb.exe?
ACT=200&KENSAKU=1&SORT=0&KTYP=0,1,2,3&KGTP=3&FYY=2020&TYY=2020&TITL=
%93s%8Es%90%AE%94%F5%2C%8C%9A%90%DD&TITL_SUBT=%97%DF%98a%81@%82Q%94N%91%
E6%81@%82R%89%F1%93s%8Es%90%AE%94%F5%95%AA%89%C8%89%EF%81%7C09%8C%8E17%93%
FA-01%8D%86&KGNO=1558&FINO=2908&HUID=190151&UNID=K_r02091735011

これは熊本市議会の光永議員からの質問を受けて古庄氏が答弁したものだが、これでは「女性専用車両はコロナによる減客・減収対策」と言っているようなものではないか。

なぜ、コロナ禍のこのご時世にわずか2両編成で車内の密度をさらに上げる可能性の高い女性専用車両の導入を反対意見を押し切ってまで強行したのか、これが答えである。

つまり「真剣に防犯対策に取り組んできたが効果が今一つ上がらないので、やむを得ず女性専用車両の導入に踏み切った」・・・のではなく、明らかに「女性専用車両導入により話題を集めて世間から注目され、さらに女性客を優遇することによって、女性が喜んで市電にどんどん乗りたがるようになり、増収増益につながるだろう」という下心からのものだと言えるだろう。

よく、女性専用車両賛成派は「女性専用車両をレディースデーなどと同列に論じるのはおかしい。痴漢対策のための正当な措置なんだからそれを差別と言うほうがおかしい」などと言ってくるが、熊本市交通局の女性専用車両は明らかにレディースデーなどの発想と同じ「女性を優遇すれば儲かるだろう」という考えである。

それも一般のサービス業などと違って、熊本市電は公共交通機関である。

しかも公営の・・・。

「コロナで人が減っている中で、話題を提供したい」などと幹部が市議会で発言している時点で「女性専用車両は痴漢対策なんだからやむを得ないだろう!」は通用しない。

『特に女性は通学が多いです。通勤が男性が多くて大体比率が1対1ぐらいになっているそうで、だからそういう女性の通学の女学生、高校生とかそういったところの人たちに快く乗ってもらうためにも』・・・と言っているから「やはり防犯対策じゃないか」という人もいるかもしれないが❝迷惑行為防止対策の取り組み❞と❝快く乗ってもらうため❞では、同じように見えて実は意味合いが全く違う。

「迷惑行為防止の取り組み」ならそれ以外の意味はないが、「快く乗ってもらうため」だと、迷惑行為をする・しないに関わらず「男という存在自体がイヤ」などという女性に「快く乗ってもらうため」(→そうすれば女性客が喜んで市電をもっと利用するようになるだろう)という意味合いも含むことになる。

しかし、それでもまだ

「迷惑行為防止の取り組み」という意味も含んでいるのだから、いいじゃないか。

「男という存在自体がイヤ」という女性がいてもそれは一部だ。

という反論があるかもしれない。

しかし、

「コロナで客が減っているから・・・」と、導入に踏み切った時点ですでに「痴漢対策・防犯対策はウソ」である。

防犯対策にかこつけた女性ウケ狙いの客寄せ女性優遇サービスだ。

しかしながら、(すでにご存知の方も多いかも知れないが)熊本市交通局は自らのサイトで「女性優先車導入の背景」と称して以下のような文章を載せている。

(熊本市交通局一般向けお知らせページ)
http://www.kotsu-kumamoto.jp/kihon/pub/detail.aspx?c_id=3&id=1156&pg=1

いかにも「熊本市交通局は迷惑行為対策に真剣に取り組んでいます!」と言わんばかりだが、先ほどの古庄氏の答弁と、この交通局のサイトの文言をよく見比べてほしい。

さっきも言ったが、「コロナで客が減っているから」と減客・減収を理由に女性専用(優先)車両の導入に踏み切った時点で、すでに導入目的は「女性を優遇すれば儲かるだろう」という下心であって「迷惑行為防止の取り組み」ではない。

表向き「迷惑行為防止の取り組み」と言っておけばもっともらしく聞こえるし、またそうすれば「熊本市交通局は正当なことをしている」と思ってもらうことも出来る。

さらに「女性専用車両は差別だ」という意見についても「痴漢対策・迷惑行為防止の取り組みなんだから差別だと言うほうがおかしい」の一言で簡単に片づけられるし、また私達のような反対派を「痴漢被害者に理解のない情けない連中が反対している」と世間に誤解させることも出来る。

しかし、自らのサイトにわざわざ「女性優先車両導入の背景」などと称してこんな記事を載せる時点で、熊本市交通局も「女性専用(優先)車両が実は痴漢対策・迷惑行為防止の取り組みではない」と疑われていることを察知しているのだろう。

だからこそ「女性専用(優先)車両は、迷惑行為防止のための正当なものです!」と世間をだまし切ろうとしているのだ。

交通局は3月17日に4月からの正式導入を市議会で報告・発表している。

そして古庄氏の発言も含め、昨年9月からの議事が公開されたのがその直前である。

交通局は正式導入を決めた理由の一つとして、

試験導入期間中に実施した2回の利用者アンケート両方で、男女ともに女性優先車両に対し「賛成」又は「どちらかと言えば賛成」と回答した人が過半数を超えており、2月に実施した直近のアンケートでは、11月に実施した1回目のアンケートより、男女ともに「賛成」又は「どちらかと言えば賛成」と回答した割合が増加しております。

などとして、アンケートで賛成が多かったことを理由にしているが、そもそも「女性専用車両をやりたい交通局」が取ったアンケートであり、このアンケート自体の信憑性については疑問符がつく。

とは言え、昨年の9月17日の時点で古庄氏が市議会でこのような発言をしていたことが公に知れていたなら、アンケートでこんな結果が出ただろうか?

賛成した人の多くは交通局が真剣に痴漢対策・防犯対策に取り組んだ結果として賛成していたのではないだろうか。

そう考えると、議事録に最近まで古庄氏の発言が公開されなかったのも「女性専用(優先)車両の本格導入が決まるまで、古庄氏の発言を議事録に掲載せず、封印していたのでは?」と疑われても仕方がないだろう。

女性専用(優先)車両に過剰な集客効果を期待する熊本市交通局

昨年9月に女性専用車両を試験導入すると発表した直後、ネット上では一斉に「2両編成で女性専用車両を実施するなんて無茶だ」「女性専用でないほうの車両の混雑がものすごいことになるのではないか?本当に大丈夫なのか?」と、車内の混雑偏りによる混乱を指摘する声が相次いだ。

(熊本市交通局では2両編成の場合、前の車両に混雑が偏る傾向があった為、後ろの車両を女性専用車両にしても大混乱は起きなかったのだが、これはあくまで「たまたまそうだっただけ」である。

首都圏や関西圏ほど人が多くないというのも一因だろう。

だが通常の電車と異なり、停留所のホームが非常に狭く、そんな中で朝のラッシュ時に女性専用車両を行うのは安全確保の上で非常に問題があるといえる。)

しかしその当時、熊本市交通局はそういった世間の声をよそに

「これまで男女関係なく乗車していた乗客が分かれて乗るようになるだけだから、混雑率は特に変わらない(と思う)」

「女性専用車両に乗りたい女性客が女性専用車両に集中して、むしろ女性専用車両のほうが混むのではないか?」

などと、トンチンカンなことを言っていた。

これは2020年9月11日付のFNNプライムオンラインの記事で紹介されたもの。

熊本市交通局は「女性専用車両が出来れば女性は全てそちらに行くはずなので、男女が分かれるだけで混雑差は生じない」、さらに「女性専用車両を導入すると女性専用車両に乗りたがる女性客がどんどん増えて女性専用車両のほうが混むかもしれない」と思い込んでいたようである。

まず「女性専用車両を設けると女性がそちらに行くので男女が分かれる」という思い込みについて、交通局は「女性優先車両による混雑格差はない」としているが、実際には極端ではないとは言え、列車によっては女性優先車両と非女性優先車両の混雑差はある。

つまり非女性優先車両にも女性客は乗ってくるのだ。

(当会は昨年、熊本市電でも何度か非協力乗車を行っている)

熊本市交通局のサイトや当会の意見書への回答などを良く見ると「男女の乗車人数の比率が概ね均衡しているので、導入によって混雑差が激しくなることはないと判断した」といった趣旨の記載が度々現れる。

先ほども触れた通り「女性専用車両を設けると女性がすべてそちらに行く」という前提でものを言っているのだ。

もちろん何の根拠もなく。

これは熊本市交通局に限らず、これまで女性専用車両を導入してきた鉄道事業者の中にもこういう勘違いをしているところが少なくない。

また、女性専用車両に賛成する者の中にもこういう勘違いをしている者がいる。

そしてこういう根拠のない思い込みが「女性専用車両は男性を痴漢えん罪から救うから男性にもメリットがある」などという、さらなるデタラメな思い込みへと発展していく。

そもそも、女性専用車両を導入しても目に見えて痴漢認知件数が減らない時点で「男女が分かれていない証拠」である。

そして目に見えて痴漢が減らないからこそ、賛成派は「女性専用車両はシェルターだ」などと言うのである。

つまり導入しても痴漢が減らなかったから「痴漢を減らすためのものではなく避難場所だ」と、女性専用車両を正当化しているのである。

女性専用車両が男性の痴漢えん罪防止に役立つという賛成派には、女性専用車両で男性の痴漢えん罪が何件減ったのか、何%減ったのか、感覚的ではなく具体的なデーターを示していただきたいものだ。

しかし明確に女性専用車両に反対している者でなければ、「女性専用車両を設けると男女が分かれる」という思いこみは「やってしまいがち」であるが、今回の熊本市交通局の「女性専用車両を設けると乗りたい女性が増えて女性専用車両のほうが混むかもしれない」などという思い込みは、さすがに群を抜いたトンデモぶりである。

これまで女性専用車両を導入してきた鉄道事業者でもこんな思い込みをしていた鉄道事業者は(当会の知る限り)さすがにない。

どうやら熊本市交通局は「女性専用車両が首都圏や関西で女性から絶大な支持を集めている」と勘違いしているようである。

「熊本でも女性専用車両を導入すれば、女性専用車両に乗りたい女性客が殺到し、コロナによる経営不振も吹き飛ぶだろう」などと、ありえない期待をしていたのではないか?

実際には女性専用車両に賛成している女性でも「女性専用車両があるからといって、わざわざ選んでまで乗らない」(自分の利用している駅の改札やエスカレーターなどに近い車両に乗る)という意見をたびたび聞く。

つまり、女性専用車両よりも「利便性の方が上」なのだ。

先ほどの当会からの質問状の<質問7>(=「女性専用車両を導入すると、女性が乗る時間帯を変えてまで女性専用車両に乗りたがり、女性専用車両が混雑するとでも思っていたのか?」という質問)への回答もまともな回答とは言えない。

試験導入期間中に一部の電停カメラで確認したところ、 到着した電車を1本見送り、次の女性優先車両にご乗車されているお客様を確認しております。

とのことだが、列車を一本見送った女性客がいたからといって、それを必ずしも「女性専用(優先)車両が目当て」とみなすのには無理がある(単に混んでいるから一本見送っただけの可能性がある)。

また、それが女性専用車両を混雑させてしまうくらい多いのかということにも触れていない。

それに、当会が言っているのは「乗る時間帯を変えてまで、女性客が乗りたがるのか?」ということであって「来た電車を一本見送って女性専用(優先)車に乗る」のとは全然意味が違う。

かなり苦し紛れの、いい加減な回答にしか見えないのだが・・・

しかし交通局は、それでもやはり女性専用(優先)車両は集客策の切り札になると考えているようで、先ほど紹介した一般向けお知らせページの末尾には

また、迷惑行為は運行している全ての時間帯で発生していることから、引き続き車内放送等を活用するなど積極的に防犯啓発に取り組むとともに、今後は、新たに多両編成車両導入に合わせて女性優先車両を増車することを検討するなど、誰もが安全、安心に利用できる環境の提供に努めてまいります。

などという一文がある。

どうやら熊本市交通局は世間が「女性専用(優先)車両=痴漢迷惑行為防止の取り組み」と騙されているのを良いことに、更なる女性専用(優先)車両の拡大、恐らくは完全終日化を今から目論んでいるのではないか。

こうした動きに対抗するには、1人や2人でなくある程度の人数の男性が別々に、そして定期的に(できればほぼ毎日)女性専用(優先)車両に乗り続け、女性専用(優先)車両を形骸化させるしかない。

こう言うと必ず、「女性専用車両をやっているのは交通局のお偉いさん方なんだから、そっちに文句を言うべきなのに、女性専用車両に乗りこむのはお門違い」などと言ってくる者が出てくるが、反対派は車内の女性客に訴えかけるために乗車しているのではない。

それに今までの経験からして、鉄道事業者に直接主張や抗議を伝えに行っても軽くあしらわれたり、丁寧に聞いてくれても所詮「上手なクレーム対応」扱いだったり、要は「馬の耳に念仏」である。

もちろん「反対派の存在を認識させる」という意味で、交通局に抗議に行くのは決して無駄ではないが、交通局に直接伝えるだけでなく、実際に乗って女性専用(優先)車両を形骸化させることが有効なのだ。

もっとも、これもある程度人数が増えないと効果が薄いのだが・・・

しかし、いずれにしても当会が関東や関西・名古屋などから熊本まで度々出ていって乗車するというわけにもいかないので、ここはやはり地元の方々に動いていただきたいところである。

当会では熊本の方の入会も募集しているので、市電の女性専用(優先)車両に反対の熊本市民(およびその周辺)の方は是非、入会申し込みフォームより申し込みいただければ幸いである。

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女性専用車両に反対する会では新規入会者を随時募集しています。
当会は男女を問わず、さまざまな年齢や立場の会員が在籍しています。
女性専用車両について疑問に思っておられる方や不満に思っておられる方はぜひ当会にお越しください。

入会申し込みフォーム よりお待ちしております。

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