当会関西本部では8月5日の午前中~昼にかけて、JR大和路線難波駅から大阪環状線、ゆめ咲線で非協力乗車会を行いました。
以下その報告です。
声かけはなかったが、任意協力なのに「女性専用」の虚偽表示に騙される人も・・・
JR難波駅ホームで声かけチェック
今回のルートは以下のとおりである。
①大和路線:JR難波~新今宮(JR難波駅で乗務員からの声かけがないかどうかを確認)
②大阪環状線:新今宮~(内回り天王寺・大阪経由)西九条
③JRゆめ咲線:西九条~桜島(一旦、改札口から出る)
④JRゆめ咲線:桜島~西九条(桜島で折り返し列車に乗り、乗務員からの声かけがないかを確認。西九条で解散)
今回はJR難波駅に午前10:40集合。
集合時刻までに参加予定メンバーがそろったので改札口を抜け、ホームへと続く階段を降りると、目の前には11:00発の王寺行き普通列車が止まっていた。
私達が乗車するのはこの11:00発の列車だが、この後10:50頃に追加で同じホームの向かい側のホームに入ってきた次発の11:15発の列車に一旦乗ることにした。
JR難波駅は行き止まりの終点駅なので来る列車はすべてここで折り返しなのだが、折り返す際に車掌と運転士が場所を代わるため、車内やホームを歩いて女性専用車の前、または中を通ることになる。
その際に乗車している私達声をかけてこないかどうかチェックするために乗ったのだ。
しばらく経ってから車掌と運転士が車内とホームをそれぞれ通りかかり、その後さらに清掃員1人が車内を掃除しながら通り過ぎたが、3人共全く声掛けはしてこなかった。
これで良いのだ。
しかし最近、世間ではLGBT法案が通ったことなどから、ツイッターなどネット上では「女性専用車に男性がいることが多くなったような気がする」「ヤバい奴かもしれないので声をかけるのに勇気がいる」等という趣旨のツイートも以前よりよく見かけるようになった。(下記ツイートはその一例)
もともとLGBT法(=正確には「性的指向及びジェンダーアイデンティティの多様性に関する国民の理解の増進に関する法律」)の施行に関係なく、女性専用車両(JR西日本は「女性専用車」表記)はそういう名前なだけで、実は任意協力であり誰でも(当然健康な男性も)乗れる。
しかし「LGBT法案が通ったせいで女性専用のはずの車両に男性が立ち入るようになって、女性専用車両が侵害されている」という考えの人間もいる中で、私達は女性専用車両が「もともと任意であること」をより周知していかなければならないと考えている。
実際には女性専用でもないものを「女性専用車両」と称して、あたかも男性乗車禁止であるかのように思わせる鉄道事業者のやり方は利用者に対する騙しである。
それも公共交通機関では本来許されない【生まれつきの属性による差別】をごまかすための騙しである。だから絶対に許されない。
人種を理由にして黒人を排除していたアパルトヘイトと、属性が性別に変わっただけで構造としては同じものである。
しかしそれを言うと、賛成派は「痴漢対策」という表向きの理由にすがりつき始める。
「痴漢対策だから差別じゃない」「女性のためのものが差別であるわけがない」というわけである。
特に後者の「女性のためのものが差別であるわけがない」というのは、本気で言っているなら物凄い思い上がりであると言えるのではないだろうか。
「女性のためなら何をやっても許される。女性のためなんだから当然!」と言っているも同然だからだ。
また、痴漢対策なら他にも方法があるが「女性専用車両しか有効な手立てがない」かのように言うのも賛成派によくありがちな特徴の一つである。
女性専用車両にしても痴漢が他の車両に移動してそこでやりたい放題するだけなのだから有効な手立てとは言い難いだろう。
それでも「女性専用車両内では痴漢が発生しないのだから効果があるに決まっている!」と言い張る者は「女性専用車両内で痴漢が起きなければ、他の車両の痴漢のことは知らない」と言っているも同然である。
また「そもそも痴漢の撲滅など実は望んでいない」という事を自ら公言しているも同然という事でもある。
女性専用車両でなくても痴漢対策の方法は他にいくらでも考えられるのだから、差別をしてまで(実際には任意協力であることを隠しながら「任意協力なので差別ではない」ということにして)「女性専用車両」を強行する理由もない。
そう言うと今度は「女性専用車両と他の方法を同時に進めよう」と言う賛成派も出てくるが、他の方法と併用しても、女性専用車両が公共交通機関での差別であることに変わりはない。
結局「女性専用車両が欲しいだけ」と思われても仕方がないだろう。
また女性専用車両の推進自体がそもそも一部の政治家・政党のパフォーマンスの結果のようなものであり、痴漢対策はうわべの理由である。(ただしJR西日本は、政治云々ではなく自ら女性専用車を導入したようなものだが、こちらは営利目的であり、やはり痴漢対策とほど遠い実態がある)
大体、本当に痴漢対策というならなぜ鉄道事業者は男性の乗車を法的に禁止するのではなく、女性「専用車両」と名乗りつつ実は任意で、しかも「差別だ!」と突っ込まれたら「任意なので差別ではありません」と言い逃れするのだろうか。
つまり、これは鉄道事業者や国交省などが女性専用車両が【任意でないなら差別である】と認めている証拠である。
強制したら差別になり、憲法云々の問題になりかねないから名前だけ「女性専用車両」という名前にし、任意協力であるにも関わらず「男性乗車禁止」と勘違いさせて男性が自分から乗らないように仕向け「男性が自分の意思で協力くださっているだけなので差別ではありません」と言い逃れできるようにしているのである。やり方が実に汚い。
あと、痴漢対策なら先ほども言ったように女性専用車両などを導入しなくても「車内防犯カメラと警官による見回りを組み合わせる」「希望者には警官の付き添い乗車をする」などで対応できる(女性専用車両を1両作るより、警備を強化した方が痴漢からすればずっと「困る」だろう)し、他にもいろいろなアイデアが考えられるが「痴漢対策を強化するために女性専用車両をどんどん拡大しろ!」と声高に主張する人に限って、こういう痴漢対策の案を出してもそれには無関心だったり場合によっては猛然と反対したりする。
痴漢対策のためではなく、女性専用車両を拡大すること自体が目的になっているからだ。
大和路線 JR難波~新今宮
さて、乗務員や清掃員などからの声かけがないのを確認してから一旦ホームに降り、まだホームに停まっていた、元々乗る予定の11:00発の王寺行きに乗車した。
私達が乗ってすぐに車掌が「3号車は女性専用車です」と、女性専用車アナウンスを流した。
さらに父親と男の子の家族連れの3人が女性専用車に乗って一度は着席したものの、すぐに隣の車両に移って行った。
また、他にも乗ってきたもう1人の男性客も隣の車両へ・・・。
「法的根拠もないのに、ましてや土曜日で痴漢が発生するような混雑もないのに、男性であるという理由だけで、しかも同行している女性まで隣の車両へ移る必要はあるのか?」と言いたくなるが、先ほどの話を思い出してほしい。
鉄道事業者は(本当は任意協力なのにもかかわらず)「女性専用車」という表記で利用客に強制力のあるものだと思い込ませており、しかもそれを問題にしても「女性専用車両は任意協力で一切強制力はありません。乗客の方が自分の意思で協力してくださっているだけなので、全然問題ありません」で簡単に逃げられるのだ
発車時刻の11:00になりJR難波駅を発車。車内は私達以外に女性客が数えるほどしか乗っていなかった。
しばらくして地下から地上に上がると、外は夏真っ盛りの晴天である。
まもなく次の今宮駅に到着。ここで数人乗ってきたが、やはりガラガラであることに変わりなく、11:04頃に大阪環状線との乗換駅である新今宮に到着。
私達はここで乗り換えのために下車し、そのまま降りたホームで大阪環状線の列車を待つことにした。
大阪環状線新今宮~(天王寺・大阪経由)西九条
ここで11:06発のJR大阪環状線内回りの普通列車に乗り換えるところだが「次の内回り列車が約6分ほど遅れて運転しております」との構内アナウンスが流れた。
しばらくホームで待っているとアナウンス通り、約6分遅れの11:12頃に環状内回り列車がやってきた。
ドアが開いた際に女性専用車から2人ほどの男性客が降りてきた事を確認し、更には私達と共にホームに並んでいた夫婦らしき男女もそのまま乗車、着席した。
さほど乗客も乗っておらず、比較的空いた車内に結構な数の男性客が乗っていたのだが、周囲の女性客は何気ない会話を続けており、特に気にしているような様子もなく、そういう意味では任意性が担保されているとも言え、良かったのではないかと思う。
次の天王寺駅で多くの乗客が入れ替わり、車内は若干立ち客が出るくらいになった。
天王寺駅で数分ほど停車してから発車。
次の寺田町を出たあたりで「痴漢などの犯罪に遭われた方、見かけられた方は・・・」との自動アナウンスが入った。
続いて、車掌の肉声で「特急が遅延したため、この列車も遅れて出発いたしました・・・(中略)・・・お詫び申し上げます」とアナウンスが入った。
大阪環状線内回り列車の一部は西九条駅でしばらく停車して、特急の通過を待ってから発車するのだが、その特急が遅れていたのだろう。
途中の鶴橋駅で多くの乗客が入れ替わり、乗ってきた外国人らしきグループの中に3人ほどの男性客がいた。降りる人より乗ってきた人の方が多く、車内は立ち客が多くなった。
とはいえ、まだ車内を移動しようと思えばできるレベルである。
大阪城公園駅でも男性客が乗車。次の京橋駅では多くの乗客が入れ替わり、多くの女性客が乗ってきて車内は混み合いはじめた。
京橋の次の桜ノ宮駅でも1人の男性客が乗ってきた。天満駅を過ぎ、大阪駅に着くと、ここでほとんどの乗客が降りて行き、車内はガラガラに。
少しだけ女性客が乗ってきたが、車内の座席の座席の多くが空席という状態であった。
大阪環状線の列車の多くは大阪駅に数分ほど停車するが、その最中にホームでは「前から●両目は土日も含め、終日女性専用車です・・・」という車両名に関する自動アナウンスが流れていた(何度も言っている通り「女性専用」は単なる車両名であって、本当は誰でも乗れる車両である)
やがて発車時刻になり、列車は大阪駅を発車。
次の福島駅では停車時に急ブレーキがかかり「おや?」と思っていると、車掌の肉声で「停車位置を少し行き過ぎましたが、安全に乗降できる位置なのでこのままドアを開きます」とアナウンスが入った。
どうやら少しオーバーランしたらしい。
福島駅は現在のところまだホームドアは設置されていないが、ホームドア設置駅だったら「そのままドアを開ける」というわけにはいかなかっただろう。
次の野田駅で2人組の男性客が乗ってきた。
結局、声掛けは全くなく、11:43頃に下車予定の西九条駅に到着。ここでJRゆめ咲線に乗り換え。
JRゆめ咲線 西九条~桜島
西九条駅のホームに降り立ち、乗ってきた大阪環状線の列車を見送った。
降りたホームの向かい側には11:49発のゆめ咲線桜島行き普通列車が既に停車しており、女性専用車には1組の男女ペアが座っていた。
私達が桜島行の女性専用車に乗車・着席してすぐ、ホームを2人の乗務員が歩いていった。
この列車は西九条折り返しのため、車掌と運転士が場所を代わるためである。
2人とも私達には何も言ってこなかった。
それは良かったのだがその後、家族連れの父娘が乗ろうとしてすぐに隣の混雑している車両へ移動して行った。
JR難波駅に続きまたも「女性専用」というウソの表示に利用客が騙されている場面を目にすることになった。
かつてはJR宝塚線で非協力乗車していた当会会員を塚口駅で引きずり降ろしたり(塚口事件)、あるいはJR東西線御幣島駅で職員が多人数で車内に乗り込んできて20分にわたって電車を止め、非協力乗車していた私達に降りるよう迫ったりした(御幣島事件)こともあるJR西日本だが、最近では女性専用車に男性がいたとしてもそれだけでは声をかけないようになってきた(これはJR西日本に問い合わせして確認済み)。
しかし、今も「女性専用車」という表記で乗客をだまし続けていることには変わりはない。
また、ツイッターなどネットを見ていても、未だに女性専用車両(JR西日本では女性専用車)が任意協力であるという事を知らない者もいるようだ。
それに、任意協力だと知っていても同調圧力や「専用」というウソ表示のせいで「乗ったら女性客から睨まれるのではないか」と恐れている男性もまだいるようだ。(近年は女性客に睨まれることは少なくなってきたのだが・・・)
西九条駅を出た列車はゆめ咲線に入って1つ目の安治川口駅を過ぎ、次はユニバーサルスタジオジャパン(USJ)最寄り駅のユニバーサルシティ駅である。
休日にこの駅に来るとUSJへの行き帰りの乗客でごった返していたりするのだが、さすがに昼間(今の時刻は正午少し前)だと、ホームに人は少なめだった。
しかし私達が乗った列車からはUSJへ行くと思われる人々が結構な人数降りていった。
ユニバーサルシティ駅を出てガラガラになった列車はほどなくして終点の桜島駅に11:57頃到着。私達も下車した。
ここは行き止まりの終点になるので引き返すことになる。そのまま引き返すのはNGなので、一旦改札を出て切符を買いなおした。
JRゆめ咲線(復路)
桜島駅からは12:20発の西九条行き普通列車に乗るべく、その折り返し列車を10分ほど前からホームで待った。
過去何度も取り上げているが、桜島駅も女性専用車が階段の目の前。
他社局の路線でも「偶然」そうなることはあるが、意図的に女性専用車を便利な位置に持ってきているのは、恐らくJR西日本ぐらいのものだろう。
こういうところからも、JR西日本の女性専用車が痴漢対策ではなく、女性客を惹きつけることを意識した「客寄せサービス」としての側面が強いことが分かる。
先にも少し触れたが、JR西日本の女性専用車は主に各都市の地下鉄などに見られるような「政治的女性専用車両」ではない。
しかし公共交通機関でありながら、このような姿勢で女性専用車を実施している時点で十分問題だと言えるだろう。
しかし、世間からは女性専用車=痴漢対策と認識されているから、大して問題視もされないのである。
実際にはJR西日本社員による痴漢や盗撮が現在でも後を絶たない現状があり、これで「痴漢対策のために女性専用車を設置している」と言っても説得力はないだろう。
土休日も含めて毎日・終日女性専用車を設定するなど、女性専用車には熱心だが、では痴漢対策に熱心なのかというと、極めて疑問である。
私達が女性専用車に乗車して着席した後、乗務員2人がそれぞれホームを歩いてきて一瞬だけ私達と目が合ったものの、何も言ってこなかった。
また、ここでも周囲の女性客たちは何気ない会話を続けており、私達のことを特に気にしているような様子はなかった。
やがて発車時刻になり、桜島駅を発車。
次のユニバーサルシティ駅ではキャリーケースを引いた2人の男性客がホームにいた。
そのうちの一人は白髪の年配の方で、任天堂のTVゲームに登場するキノコのキャラクターが中に入った四角い風船(下写真)を手に持っており、USJからの帰りだと一目で分かった。
ホームの男性2人はそのまま乗ってきて「大丈夫!大丈夫!」という会話をしながら、車内に留まった。
当然のことながら、法的にも大丈夫であるので問題なし。
しかし、女性専用車の表記に騙された人間からすると「無神経な男がJRの規則を破って男性が乗ってはいけないエリアに侵入した」と映ってしまうのであろう。
もちろん、JRの規則(輸送約款)にも「女性専用車に男性が乗ってはいけない」などとは書かれていない。
よってJRの規則でもなければマナーでも配慮でも何でもない。
先にも言ったが「任意協力で、男性も乗れることになっているから差別には当たらないことになっている」のだ。
むしろ「女性専用車という名前だから」と、男性を無理やり降車させたりする方が、JRの規則どころか法律違反であり、下手をすると強要罪(刑法223条)や、手を出した場合などは暴行罪(刑法208条)怪我をさせれば傷害罪(刑法204条)にも該当し、降車させようとした方が「加害者」になってしまう。
(なお、鉄道営業法34条2項は明治時代、大日本帝国憲法下で作られた法律であり、現代の女性専用車には適用されない)
今回のJRゆめ咲線では声掛けはもちろん、車掌による「女性専用車というただの車両名」に関するアナウンスすら全くなく、終点の西九条駅には12:26頃に到着した。
ここで今回の乗車会は終了である。
さすがに以前のようなしつこい声掛けや「場合によっては実力行使」的なことは無くなってきた。
今回もJRの職員や警備員、清掃員などからは全く声掛けをされていない。
そして女性客からも声掛けは無かった。
しかし一方で、女性専用車という表示に騙されて本当に専用だと思ってしまう人が少なくないことや、恋人や家族連れなどが多くなる(しかも平日朝ラッシュのように混み合うこともない)土休日などにも終日女性専用車を設定していることについても非常に疑問を感じる。
当初は痴漢対策を理由にしながら、いつしか痴漢云々は関係なく「あるのが当たり前」になってしまっているのだ。
平日の設定や専用でもないのに「女性専用車両」と、ウソの表示やアナウンスをするのもやめていただきたいが、特に土休日の設定は今すぐにでもやめさせるべきである。
とは言え、すでにここまでで述べてきたようにそもそも痴漢対策という理由自体が建前と化している状況でこれらの「改善」を申し入れたところでJRもそう簡単には動かないだろう。
だからこそ(当会に所属しているか否かに関係なく)反対派の声、そして反対派の活動を絶やしてはいけないのである。