名古屋市交通局が名城線に女性専用車の導入拡大を検討している件について、昨年(2006)9月に、名古屋市土木交通委員長の服部正也氏が市議会における答弁の中で以下のように述べていたことが判明した。
次に、高速度鉄道事業決算についてであります。
委員からは、女性専用車両に関し、女性が痴漢被害に限らずさまざまな面から安心して乗車できるようにするべきであるとの観点から、他路線での実施、時間帯の拡大及び東山線での車両増加に対する検討状況がただされ、当局からは、公共交通機関はお客様に等しく利用していただくことが本来であるが、女性専用車両は、痴漢被害に不安を感じる女性利用者に安心して乗車していただくため、特別な措置として、痴漢被害の届け出件数に基づき、被害が集中する東山線の朝の通勤ラッシュ時間帯に6両編成中1両において平成14年度から実施してきたところである。平成17年度の被害届け出の傾向についても基本的に変化がない状況であり、引き続き、東山線において導入当初と同様の形で実施してきたところであるとの答弁がありました。
これに対し委員からは、女性専用車両については、時間帯及び路線の拡大に努めることとの意見が述べられました。
この答弁は先にも述べた通り、昨年9月のものだが、この時点で名古屋の専用車推進勢力はすでに水面下で動いていたのである。
この名古屋市議会の答弁では、「当局(名古屋市交通局)から、東山線の平成17年度の被害届け出の傾向についても基本的に変化がない状況であり・・・という答弁があった」 ということが述べられており、女性専用車導入後も痴漢件数が減っていないことを土木交通委員会は承知しているわけだが、これにもかかわらず委員からは、「女性専用車両については、時間帯及び路線の拡大に努めること」 と意見が出ている。
(ちなみに、土木交通委員会の名簿http://www.city.nagoya.jp/shikai/giinmeibo/iinkai/nagoya00027980.html には、名古屋で専用車を強力に推進している議員の名前も見られる。)
そして、導入理由についても、いつの間にか「痴漢対策」から、「痴漢対策に限らず、安心して乗車できるようにするため」と、「拡大」されているが、「痴漢対策」と、「女性に安心して乗っていただくため」では、一見同じように見えて、実は大違いである。なぜなら、「痴漢対策」なら、導入しても痴漢の件数が減らないのであれば、これは痴漢対策としては不適当であるということになる。また、混雑のない路線・時間帯に設けるのも、不適当ということになる。しかし、「女性の安心のため」という理由であれば、例えば、ガラガラの車内で遠くの方に男性が一人おとなしく座っているだけでも、これを女性が「不安である」と言えば、女性専用車設置の理由としてまかり通ってしまうことになる。
名古屋市交通局も上からの圧力に屈して、名城線に女性専用車を拡大させようとしているわけだが、これを見ても、女性専用車両は「痴漢対策」ではなく、設置・拡大することそれ自体が目的になってしまっていると言えるのではないだろうか?
情報元:
「名古屋市議会議事録検索」
http://www.gijiroku.jp/gikai/c_nagoya/index.html