3月15日開業予定のおおさか東線に、開業当初から女性専用車が導入されることが駅に置いてあるパンフレットの内容から分かりました。そこでJR西日本に(知らないふりをして)問い合わせると「現在、そのようなことは情報として上がってきておりません」との答え。
なぜこんなウソをつくのかと思いますが、どうやらそこにはJR西日本側の「ある考え」が背景にあるように思われます。
駅設置のパンフレットで女性専用車をアピール
2008年3月に開業予定のJR西日本「おおさか東線」に開業と同時に女性専用車が導入されるということがJR西日本の大和路線・学研都市線など、アーバンネットワークと呼ばれる関西圏の路線の駅に置かれているパンフレット(下写真)によって分かった。

パンフレットによれば、平日の始発から9時までと17時から21時まで、
おおさか東線の全ての普通列車に女性専用車を設置するとのこと。

地元以外にはウソをついてまで隠蔽?
現在(2008年2月現在)、この件については関西圏のJR駅に置いてあるパンフレットのみでの告知で、JR西日本サイトでは(2月現在)触れられておらず、駅のおおさか東線開業告知ポスター等でも女性専用車については触れられていないため、関西地区以外の人にはもちろん、関西地区の人でも駅のパンフレットを手にとって読んだ人以外にはほとんど情報は伝わっていないと思われる。
(ネット掲示板などでパンフを見た人がこの件について書き込んだようだが、ネット上での書き込みによる情報のため、情報の信憑性については疑問視する向きもあったと思われる。)
当会では今年(2008年)の1月2日に関西本部のある会員(以下、会員A)がJR西日本に問い合わせ、「普通列車については女性専用車を実施の方向で検討中。実施時期については決まっていない。」という回答を得ていたものの、JR西日本サイト等での告知が無いため、開業と同時の女性専用車導入はないかと思っていたところ、1月31日になって関西の別の会員(以下、会員B)より、「JR大和路線久宝寺駅の、おおさか東線開業案内パンフレットに『おおさか東線に女性専用車両を設定』と書かれている。」との情報が入った。
そこで、会員Aが改めてJR西日本に問い合わせたのだが、JR西日本側はやはり「現在、そのようなことは情報として上がってきておりません。」と答えたとのこと。明らかなウソなので会員Aが「今、久宝寺駅で、おおさか東線に女性専用車導入と書かれたパンフレットを見たのだが。」と言ったところ、今度は「その通りでございます」
この会員Aおよび会員Bへの対応から分かるように、すでに女性専用車導入を決定している(女性専用車両導入告知のパンフを駅においている)のに「情報として上がってきていない」などと回答し、証拠を突き付けられると仕方なく「その通りでございます」と認めるというとんでもない対応をしているのである。
なぜこんな対応をするのか
このようにJR西日本の対応はとんでもないものだったが、何故そんなことをするのだろうか。
最初は何故かよく分からなかったが、よくよく考えてみるとこれは恐らく会員の問い合わせを「遠方からの問い合わせ」だと思ってのことではないかと思われる。
地元にしか(おおさか東線の女性専用車導入を)知らせていないから遠方の人間が知るはずがないだろうと踏んで「このような情報は上がってきておりません」と惚けたものの実は相手は地元の人間で、しかも「パンフを見たぞ!」と言われたから仕方なく「その通りでございます」と認めたのだ。
また、JR西日本がこういう対応を取る背景には「女性専用車に反対するような人間は、ごく僅か」「地元民でない人間が全国から騒いでいるから多く見えるだけ」という考えがあるのではないかと思われる。
つまり「女性専用車に反対する人間はごく僅かしかいないから、地元に限定して情報を伝えておけば、女性専用車に対する抗議や苦情はほとんど来ないだろう」と踏んでいたのではないかと考えられるのだ。
おおさか東線とその近隣路線の沿線住民に対してのみ、女性専用車の設置をパンフレットで何か素晴らしいことのように「朝夕通勤時間帯に女性専用車を設定」などとアピールしておけば、JR西日本に賞賛の意見は届くことはあっても、反対派は女性専用車の存在にすら気づかない…と思っていたのではないだろうか?

しかし、実際はそんなことはない。さすがに多数派とまでは行かないが、女性専用車に反対の意見を持つ者は(数としては)決して少なくないだろう。仮に全体の5~10%程度だったと仮定しても、毎日何万人・何十万人が利用する利用する路線ならその5~10%といえば結構な数である。
そう言うと、「もしそうだとすれば、90~95%は賛成していることになる」などという勘違いをする者が出てくるかもしれないが、もちろん「反対派以外は全て賛成派」かというと、そのようなことはない。
女性専用車の賛否について、恐らく一番多いのは賛成派ではなく「無関心層」であろう。
JR西日本は、2004年に阪和線や大和路線に女性専用車を拡大したときにも「他線区に比べ、女性専用車のある列車の割合が低くなりますが、ご理解ください」「天王寺駅での乗り降りに便利なよう、女性専用車を(階段に近い)〇号車に設定しました」というような、あまりにも男性利用者の立場を無視した内容を案内パンフレットなどに書いてきていたが、これもどうやらJR西日本のそうした「反対派はごく僅かであり、女性専用車は世間から賞賛されるはず」という考えがその背後にあるのではないかと思われる。
鉄道は公共性の高い事業であり、本来同じ運賃を支払っている乗客を差別的に扱ってはならないものだ。それを「痴漢被害が深刻だからやむを得ない」という建て付けで(さらに女性専用と名乗りながら「任意協力」にするという小手先のごまかしで)まかり通らせているものである。
それをまるで素晴らしいことのように、そしてセールスポイントのように扱うのはどう考えてもおかしいのではないか。世間の多くの人々は「痴漢対策」という理由で納得しているのかも知れないが、少なくともJR西日本のこうした状況を見る限り、痴漢対策からは外れてきていると言えるのではないだろうか。