関西本部では2021年10月26日の朝に阪急京都線で非協力乗車会を行いました。
京都河原町駅停車中に乗務員が非協力乗車中の会員の体に触れて声をかけてきたためトラブルになりました。
以下その報告です。
乗務員が会員の身体に触れて声掛けし、阪急職員が付き添い乗車
朝の十三駅からスタート
当会ではこれまで阪急京都線では何度も非協力乗車会を行ってきたが、その多くは夕方から夜間にかけての時間帯で午前中や昼間の時間帯ではあまり行ってこなかった。
また、今回は十三駅で声掛けがないかどうかの確認のため、大阪梅田駅からではなく十三駅からスタートとした。
十三駅で待ち合わせをしていると、参加予定の会員が少しずつ集まってきた。
今回乗車するのは十三8:56発の京都河原町行き特急である。
まだ列車の到着・発車まで結構時間があるので、私達はホームで駅員の様子を見ることにした。
列車が来るたび駅員が1人ホームに立って、ドアの安全確認などをしているようだ。
そして列車が走り去ると、次の列車が来るまで控室のような所に引っ込んで、次の列車が近づくとまた出てくる。
その他、時々どこからか他にも駅員が来てホーム上に駅員が2人~3人になることもある。
やがて、私達が乗車する予定の8:56発の特急が間もなくやってくる時間になったので、参加者全員女性専用車両位置に並んだ。
その時駅員はホームにいたが、私達の存在には気づいているのかいないのか、声をかけてくる様子はなかった。周囲の女性客も特に声をかけてきそうな様子はない。
やはり、「『女性専用』と表記してあっても実は任意で、男性の乗車を禁止するものではない」ということが知れ渡ったからか、女性専用車両が導入されだした十数年前に比べ、周囲から声をかけられることは少なくなった。
ただ駅員に関しては並んだだけでは声をかけてこなくても、乗車しようとした際に声をかけてくる可能性はあるので、今回はそのあたりもチェックするつもりだった。
ところが京都寄りの方向から「ピー」という電車の警笛音が聞こえ、その時ホームにいた3人の駅員達は全員そちらの方に急いで向かって行ったため、私達が乗る京都河原町行き特急が到着した時には、近くに駅員がいなくなっていた。
何が起きたのかは結局分からなかったが、誰かが駅近くの踏切を無理に渡ったりしたのだろうか?
そのまま私達は予定通り列車に乗りこみ、座席に座った。
車内はラッシュ時を過ぎていたためかそれほど混雑しておらず、また十三で降りた人がいたため私達は着席することが出来た。
女性専用車両内に男性(私達)が集団で乗車し着席したわけだが、周囲の女性客も私達のことを特に気にするような様子はなく、何気ない会話をかわしていた。
これも今から十数年前だったら周囲の女性客から声かけされるか、あるいは女性客からの通報を受けた駅員が声をかけに来たりするなどしていたかもしれないが、今ではそうしたことも少なくなった。
やはりそういう意味では、当時と状況は変わってきていると言えるのかもしれない。
十三を出て、淡路、茨木市、高槻市と停車して高槻の先、西山天王山駅を通過したあたりから、大阪府を出て京都府に入る。
京都府に入って最初の停車駅が長岡天神で、その次は桂に停まる。
桂では数分程度停車していたので「もしかしたら駅員が来るのか?」と思ったが、そうではなかった。
うやら単なる時間調整だったようだ。
西京極を通過すると、ほどなく地下に潜ってこの先は終点の京都河原町までずっと地下区間である。
地下駅の西院、大宮を通過し、京都側の主要駅である烏丸に到着すると、乗客の多くが降りて、車内はガラガラになった。
烏丸を出ると、終点の京都河原町はすぐ次の駅である。
列車は数分ほど地下を走って京都河原町に9:42頃到着した。
河原町で警察に女性専用車両の認識を確認
京都河原町駅で一旦改札を出て、私達は地上に上がった。
帰りは10:10発の特急に乗る予定である。
しばらく時間があったので、私達は警察が女性専用車両についてどのくらい正しい知識を持っているか確認したいという考えから、近くの交番に行き、そこで女性専用車両に男性が乗った場合に警察としてはどう対応するのかなどを質問してみた。
最近ではめったに起きなくなったが、以前は乗車会で粛々と乗車しているだけで通報され、警察が来るようなこともあった。
そしてもし万一そういうことがあった場合に警察は正しい知識をもってきちんと対応してくれるのかどうか、確認したかったのだ。
交番の中には警察官の方が一人いらっしゃったので「今、お時間よろしいですか?」と確認してから、いろいろ尋ねてみた。
すると、その警察官は
「女性専用車両と書いてあっても、鉄道会社があくまで男性の方にご協力お願いしますと言っているだけで強制的な力はないから、それだけで乗った人を捕まえたりするようなことはない」
と、答えてくださった。
そして、「もしどちらかが『手を出した』とか『出された』とかいう話になれば、それは女性専用車両に乗ったこととはまた別の案件(暴行)になるので、その場合はそれとして対処する。」
とのことだった。
少なくともその警察官は女性専用車両について基本的なことは理解してくださっているようだったので私達としては少しほっとした。
あまり長く話をするとご迷惑になってしまうので、私達は話を5分ほどで切り上げ、最後は「お忙しいところありがとうございました」と礼を述べて交番を後にした。
京都河原町~大阪梅田
私達は京都河原町駅に戻り、10:10発の特急に乗車するためホームに並んだ。
しばらくして列車がホームに入ってきた。
京都河原町は終点駅なので、当然ながらすべての列車がここで折り返す。
列車が到着し、私達は今度は二手に分かれて乗車した。
折り返しのため、発車までしばらく時間がある。また始発駅でラッシュ時間帯からも完全に外れているので、車内はガラガラである。
しばらくして車内清掃の人が私達の目の前に来たが、そのまま声をかけてくることなく、通りすぎていった。
乗務員が会員の身体に触れて声掛け、会員が強く抗議。
このまま何事もなく発車するかと思ったその時、少し離れたところに座っていた当会会員のひとりが乗務員に抗議する声が聞こえた。
どうやら、通りかかった乗務員が座席に座っていたその会員の肩に手を触れて「ここは女性専用車両なんですが・・・」と声かけしてきたらしい。
見た目判断による男性客個人への声掛けだけでも十分失礼ではあるが、声掛けだけならまだしも(違法行為をしていない)乗客の体に触れるのは法的にもまずい。
下手をすれば有形力の行使=暴行罪と見なされかねない行為だ。
会員の体に触れた乗務員はその場から離れて行ったものの、会員が強く抗議したため、他に何人か駅員がやってきた。
そして少し離れた位置に座っていた私達のところにも駅員がやってきて「体に触れられたのはどなたですか?」と尋ねてきた。
私達が「あの人です」というと、駅員は体に触れられた会員のところに行き、その会員と何やら話をしはじめた。
そして、このままでは列車が遅れると判断したのか、駅員達はとりあえず列車を発車させることにしたようだ。
助役K氏を含む駅員数人が乗車したままドアが閉まり、列車は京都河原町駅を発車した。
阪急職員が付き添い乗車
次の烏丸駅停車中にその助役K氏が私達にも声かけ。
助役K氏「すみません、ここ女性専用車両になるんですよ。ご協力できますか?」
会員「何でついてきてるのですか?しつこい!ご協力って言いますけど、何をしたらいいのですか?」
こちらがそう返すと、その助役K氏は黙って引き下がって行ったが降車することはなく、そのままドアの前で立った状態で電車は発車した。
どうやらこの先も私達について乗車するようだ。
福岡県の西鉄で乗車会をすると、必ずといって良いくらい助役などがついて乗車してくる(参考:西鉄の乗車会報告)が、それに似た状況である。
次の停車駅の桂では複数の駅員が駆けつけて来て、私達に直接的な声かけはしてこなかったものの、それまで乗っていた助役K氏に代わって今度は桂駅の助役がそのまま乗って来てドアの前に立った。
桂駅を発車後にもまた女性専用車両の案内自動放送が流れた。
しかし、桂駅から乗って来た女性客は私達の隣の席に座って来たりするなど、私達の事を気にしているような様子はなかった。
長岡天神駅を発車後には桂駅からついて来た助役とはまた別の鉄道係員(乗務員?)も車内を見廻りに来た。
次の高槻市駅でもまた1人の駅員がホームで待っていて、停車中に車内に入ってきて助役と少し会話した後、すぐに電車から降りて行った(次の茨木市駅では、特にこれといった事はなし)。
しかし次の淡路駅でもまた、待っていた助役のM氏が車内に入り、それまで乗っていた助役と交代してから、その状態で発車した。
(その次の十三駅では特にこれといった事はなし)
終点の大阪梅田駅には10:53頃に到着し、降りる際に会員の一人が淡路駅からついて来ていた助役M氏に、何でついて来たのかを問い掛けてみると、ついて来た理由については答えず(開いた側のドアに向かって手を伸ばしながら)「こちら、どうぞ・・・」
仕方ないので、そのまま下車した。
―阪急がこういう対応を取ってきたのは当会が知る限り初めてだが、どうやら非協力乗車する男性が現れた場合の対応をマニュアル化したようだ。
途中の停車駅ごとの職員達の連係プレーはもちろんだが、その他にも「一応声掛けはするが、一度断られたらしつこくしない」というのもあるのだろう。烏丸駅で協力依頼をお断りしたら、それ以降は大阪梅田に到着するまで声かけは全くなかった。
任意協力であるのだからしつこく声掛けをしないのは正解だが、しかし逆に言うと、そんな風にわざわざマニュアルを作成して対応しなければならないものを運行し続けていること自体が私達からすればちょっと首をかしげたくなる。
まあ、一般人の感覚からすれば、「痴漢対策のための取り組みを妨害する反対派がいるからそうせざるを得ないんじゃないか」と恐らくは思うだろうが、阪急の女性専用車両もおよそ痴漢対策とは言えないものである。
以下に示す画像は2015年から2016年頃の神戸線や宝塚線に女性専用車両を追加導入した際に阪急が自らのサイトに出していたものだが、女性専用車両のことを「人にやさしい、魅力ある鉄道サービス」を実現するためのサービス水準向上の一施策であると考え(女性専用車両を導入した)と明言している。
つまり、痴漢対策のためにやむを得ず導入したのではなく、あくまでサービスなのだ。
それも男性を男性であるという「本人の意思や努力では如何ともしがたい、生まれつきの属性」だけで事実上排除して、それを「人にやさしい魅力ある鉄道サービス」とは・・・
世間では「女性専用車両は痴漢対策なのだから差別じゃないし、差別差別という人間は、痴漢被害者のことを考えてない」という認識の人が多いと思われるが、そういう人ほどこういう実態について良く知っていただきたいものである。
この乗車会と同じ日の夜、関西本部の別グループによるJR西日本線(おおさか東線など)の乗車会も行われたが、こちらは特に何事もなく、無事に終わったようだ。