昨年末に中日新聞など一部マスコミで名古屋市交通局東山線の女性専用車両が終日化されることが報じられたが、この3月11日付で名古屋市交通局通側から正式に発表があった。
交通局発表の資料(http://www.kotsu.city.nagoya.jp/dbps_data/material/localhost/_res/about/press_release/20150311-1.pdf(現在はリンク切れ))によると、「女性専用車両を設置していない時間においても、東山線は他路線に比べて乗降客が多く、痴漢被害が多いことから拡大して実施するものです」とあるが、これは「後から付けた、表向きの理由」である。
2014年6月の名古屋市議会の議事録を見ると、今回も公明党の議員が市議会において交通局長に女性専用車両の拡大を迫ったことが記録に残っており、それに対して交通局長が「女性専用車両に対しましてさまざまな御意見をいただいている現状において、女性専用車両を拡大することにつきましては、慎重に検討すべき事項と考えております」と答弁していることやそれに対し公明党議員が「あまりにも残念でございます」などと返していたことも記録に残っている。(平成26年定例会6月21日―13号)
これまで、2002年に朝ラッシュ時に導入された際も、2008年に夕方に拡大された際も、公明党が市議会で女性専用車両の拡大を嫌がる交通局(※)に女性専用車両の導入・拡大を強く迫っていたが、今回も交通局が結局押し切られる形で終日化を決定したことが議事録からうかがえる。
(※2006年の市議会において、交通局側が「公共交通機関は誰でも公平に乗れるのが大原則だが、女性専用車両は特別な措置」「女性専用車両導入後も痴漢の件数に大きな変化は見られない」という主旨の答弁をして「女性専用車両の拡大はしたくない意思」を遠まわしに表明している(平成18年9月定例会10月17日-21号))
結局、公明党の意向で拡大するものを、表向き「痴漢対策」と称して、体よくまかり通らせようとしているだけなのである。
よく考えれば分かるが、2002年に朝ラッシュ時に女性専用車両が導入されて13年、夕方に拡大されてからも7年痴漢件数が減らないどころか、近年逆に増えている(下記、交通局発表の資料にも、近年痴漢件数が増加していることが記されている)のだから「女性専用車両に痴漢件数を減らす効果がない」ということは明々白々である。
そもそも朝夕ラッシュ時という、「一番痴漢が発生する時間帯」に設けて痴漢件数が減らないのだから、それ以外の時間帯に設けること自体、ナンセンス以外の何物でもない。
交通局の発表通りだとすると「朝夕ラッシュ時に女性専用車両を設けているにも関わらず、昼間などに痴漢が多数発生しているため、全体の痴漢件数が減らない」ということになるが、こちらのページ内のグラフを見ていただいてもわかる通り、関西や中京圏よりもはるかに人の多い首都圏ですら昼間の痴漢発生は少ないという結果が出ている。
しかしながら、今回の件についてのマスコミ報道はどこもほぼ「痴漢対策」一色であり、これでは国民は「女性専用車両拡大の真実」を知るわけがない。
結果、「女性専用車両反対派は、反対運動をする前に痴漢被害者のことを考えろ。なぜ女性専用車両が必要になったかを抜きにして反対運動をしても説得力の欠片もない」などといった「無知であるが故の戯言」を、あたかも「絶対的正論」のように思い込んで主張してくる人間が出てくるのである。
女性専用車両に反対することは、痴漢対策に反対することではない。
痴漢対策という、誰もが反対しにくいうわべの理由で公共交通機関に本来あってはならない物を正当化しようとする動きに反対しているのである。
情報元:
名古屋市交通局側からの女性専用車両終日化正式発表(現在はリンク切れ)
名古屋市議会議事録(「女性専用車両」のワードで検索すると公明党議員交通局長のやり取りなどが出てくる)(現在はリンク切れ)