2021年12月 首都圏の鉄道事業者の対応について国土交通省に通報

このところ首都圏の鉄道事業者では任意確認(非協力)乗車の男性に対し、半ば降車・移動を強制するかのような対応が当たり前のようになっており、このことについて当会の会員が国土交通省に電話で問い合わせ、担当者にその実態を伝えました。

その結果、担当者からは鉄道事業者に聞き取りと指導を行うとの回答がありました。

以下、その報告です。


首都圏の鉄道事業者のひどい対応を国土交通省に【通報】

【任意協力】だからこそ「差別ではない」ことになっている女性専用車両の強制は許されない。

国土交通省の公式見解

当会サイトをいつもご覧の皆様は既にご存知かもしれないが、まずは国土交通省の公式見解をご覧いただきたい。

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国土交通ホットラインステーション
東京都千代田区霞が関2-1-3
連絡担当 西川
TEL 03-5253-8111(代表)
03-5253-4150(直通)

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以下のとおり回答します。

現在各鉄道会社で導入されている女性専用車両については、あくまでも利用者のご理解と任意のご協力のもとに行われているものであり、法的な根拠はありません。

女性専用車両はあくまでも男性利用者の任意のご協力のもとに実施されているものであることから、実際の運用に際して、駅係員等が誤乗車された方に対して呼びかけ、ご協力をお願いすることはあると考えます。

しかしながら、強制的に降車させるような行為は不適切と判断されることから、そのような事実があれば指導して参りたい。

つまり、全国の鉄道事業者の監督省庁である国土交通省が「女性専用車両は任意協力であり、法的根拠はなく、強制するのは不適切である」との見解を示しているのだが、最近、首都圏の鉄道事業者は女性専用車両に男性を乗せないよう、ほぼ強制ともとれる対応を取っている。

女性専用車両は本当に強制すると憲法(に示された両性の平等)云々になりかねない代物であり、任意協力だからこそ「公共の場での差別ではない」ということで、何とか罷り通っているのだが、それを事実上強制するのは非常に由々しき問題である。

首都圏鉄道事業者の実態

当会サイトでは「活動履歴」として主に任意確認(非協力)乗車会の報告などを掲載しているが、当サイトに掲載しているものが全てではない。
ここしばらく関東の乗車会の活動履歴を出していなかったが、実はこのようなこと(下記)があったのである。

2021年10月15日 JR中央・総武線

千葉駅から任意確認乗車を開始。

西船橋駅で一旦下車するまでは特に何もなかったが、西船橋駅8:48発 中野行き各駅停車に乗るため当会会員が女性専用車位置に並ぶと運転士が声掛けをしてきて、

「女性専用車両です。皆さん、決まりを守っています。隣の車両に移動してください。移動していただけないということでしたら駅員を呼んで強制的に降りていただきます。女性専用ですから。」

と、明らかに「女性専用車両は強制」である旨の発言をした。

西船橋駅で声掛けしてきた運転士

それでも会員達が乗車すると、今度はその先の市川駅で助役1人と駅員3人が乗車してきて、かなりの勢いで詰め寄ってきた。

そして、

「(女性専用車両には)意味があります。女性専用で不安な女性達が大勢乗っています。今すぐ降りてください。降りないと発車できません。ご理解ください。他の皆さんはちゃんと守ってますよ!」

などと発言し「降りないと列車を発車させない」と、半ば強制的に降車させようとした。

さらにその後、錦糸町駅や浅草橋駅でも一旦下車して後続の列車に乗り換えたが、浅草橋9:24発の列車の運転士が列車をホームに停車させた後、運転室のドアを開け、

「女性の方ですか?違うので隣に移ってください。あ!この方は障がい者なのでお付き添いとしてなら乗れます(障がい者の方とは隣にいた別の会員のこと)。男性は乗れません。皆さん守ってますよ」

・・・「皆さん守っている」からどうだというのだろうか?

法的根拠のある(最低でも輸送約款に規定のある)ものならまだしも、そうでもないのに「みんなが守っているから必ず守るべき」というのなら、

【ただの同調圧力】である。

さらにその先の中野駅で駅の助役に浅草橋でのことを話すと、

「女性専用でご利用いただいており、男性の方をお断りして運行しています。理由は不安な女性のお客様が大勢乗っているからです」

と回答。

「不安な女性客がいる」などと、女性客の存在を盾に「女性専用で男性はお断り」というウソを正当化した。

「不安な女性がいる」といえば一見もっともらしく聞こえるが、そもそも女性専用車両が女性にとって素晴らしい場所とは限らない。

「女性専用車両は女性が唯一、安心して利用出来る場所」みたいな思い込みのようなものが存在するが、それはステレオタイプ(固定観念)というものである。

特に最近は列車内での犯罪が多様化しており、凶器を使用しての無差別事案も複数発生していることから、防犯上からも男性乗客の存在は犯罪抑止力として重要度を増しており、また加害者が女であるケースも散見される(つい先日も横浜市営地下鉄で女がハンマーで無差別に他の乗客を殴るといった事件もあった)ことから、

「女性のみの空間では絶対の安全が保たれるとは言い難い」のではないか?

また、女性専用車両に賛成している女性の中でも「わざわざ選んでまで乗らない」という意見が少なくないということにも留意する必要がある。

2021年10月20日 東京メトロ千代田線

北綾瀬8:28発 明治神宮前行きに乗車。

列車が町屋駅付近に差しかかった時、車掌が肉声で以下の様なアナウンスをした。

「女性専用車を利用可能なお客様は、女性のお客様・男性の障がい者と介助者もしくは小学生以下のお子様に❝限られます❞のでご理解ください」

現在、日本の多くの鉄道事業者は女性専用車両には「男性の障がい者・介助者、小学生以下のお子さまも乗れる」としているが、それ以外の男性の乗車についても任意のはずである。

「男性の障がい者・介助者、小学生以下のお子さま」に【限られる】と言うのであれば、これは明らかに「女性専用車両は強制である」と言っているようなものであり、事実に反する。

このあと、女性客が車掌に「男性が乗っている」と言いつけると、車掌はさらに肉声で

「女性専用車が利用できる男性の方は、小学生以下・障がい者あるいはその介助者に❝限られます❞。」

と会員個人に対して言っていると思われるアナウンス。会員は車内の笑いものにされてしまった。

その放送を行った車掌になぜそのようなアナウンスをしたのかと質問すると、「女性客の要望を聞くマニュアルになっているのであなたに対して個別の放送をした」と発言。

車掌に質問

2021年10月22日 JR中央・総武線

会員達が西船橋駅8:01発の列車に乗るため女性専用車位置に並ぶと、運転士と車掌が声掛け。

運転士:「女性専用です。移動してください。」

車掌:「移動する決まりです。ステッカーに書いてあります。」

女性専用車には法的根拠がないのはもちろん、輸送約款にさえ「男性は女性専用車から移動しなければならない」などという規定はない。

「ステッカーに女性専用と書いてあるから移動するのが決まり」などとは、デタラメもいいところ。

そもそも任意協力で法的根拠も強制力もないものに女性「専用」などという名前をつける方がおかしいのだが・・・

そして電車が発車すると、10月15日の時と同様にやはりその先の市川駅で駅員2人と助役1人が乗ってきて個別の声かけをしてきた。

JR中央・総武線の電車(当日撮影)

2021年11月26日 JR中央・総武線

西船橋駅8:08発の列車に乗ろうと乗車位置に整列していると運転士が声をかけてきた。

「女性専用です!この車両は乗れません!遠慮してもらってます!皆さん守ってます!特別扱いは出来ません!ルールを守ってください!お断りしてます!」

女性専用です → ウソ

この車両は乗れません → ウソ

皆さん守ってます → ウソついて「乗れない」と思わせているだけ

特別扱いは出来ません → 特別扱いは女性専用車両のほう

ルールを守ってください → 任意協力であり、男性が乗ってはいけないというルールなど存在しない

もう滅茶苦茶である・・・

それにしてもJRの駅員や乗務員は皆そろって同じことを言う。

「女性専用車両は決まりだ」

「みんな守っている」

「乗っている女性はみんな不安がっている」

等々・・・

恐らく、女性専用車に男性がいたらこのように対応するよう「マニュアル化」しているのだろう。

つまり現場の判断ではなく、会社ぐるみで女性専用車を半ば強制しているといえるのではないだろうか?

東京メトロについても車掌が「女性客の要望を聞くマニュアルになっている」とはっきり言っているので、これも現場の判断ではなく、会社からの指示と考えられる。

国土交通省に通報

このように首都圏の鉄道事業者は最近、あからさまに女性専用車両を強制するような態度を取っている。

しかし、任意確認乗車を続けるだけではこうした鉄道事業者の「女性専用車両の任意性」を蔑ろにするひどい対応が改まるとも思われない状況であることから、当会の会員の一人が国土交通省に電話をかけ、担当者に首都圏の鉄道事業者の実態を詳しく話した。

国土交通省に電話

電話に対応したのは国土交通省・鉄道局お客様サービス政策室担当者のK氏。

K氏によれば、上記会員からの報告にあったような「男性の乗車はお断りしている」「移動をしていただく」等の関係者の発言は「明らかに女性専用車両の運用ルールに反した対応」であり、この件については追ってJR・地下鉄(東京メトロ)へ聞き取り、指導を行うとのこと。

一方で「しつこい協力要請」については「鉄道各社で対応が異なるため、国交省からどうせよとは言い難い部分がある」との回答だった。

しかし少なくとも、改めて女性専用車両の運行に際し、男性の乗客に対し強制と取れる言動・対応はできないことについて確認が取れたので、今後多少なりとも男性の乗車に対する鉄道関係者の態度は軟化する可能性はある。

先ほども言ったが、女性専用車両は本当に強制すると憲法云々になりかねない代物であり、任意だからこそ「公共の場での差別ではない」ということで何とか罷り通っているのだ。

今では大都市圏の路線に女性専用車両があるのが当たり前のようになってしまい、「実は公共交通機関にはあるべきでないものを『痴漢被害が深刻だから』『緊急措置だから』と理由をつけて押し切って導入したもの」という認識が利用者にも鉄道事業者にもなくなってしまっているのではないだろうか?

そういうと「痴漢被害が深刻だからこういう措置を取らざるを得なくなったんじゃないか!」と言いだす人が必ず出てくるが、これも当会が繰り返し「痴漢対策は建前」と言っているように、「痴漢対策のために緊急避難措置として設けられたもの」という前提が本当かどうかは極めて怪しい。

百歩譲って本当に痴漢対策だとしても、何もその手段が女性専用車両でなければならないと言う理由はどこにもないのだ。

車内監視カメラがJR埼京線で大きな効果を発揮したというのは既に多くの人が知るところであり、当会も以前から「性犯罪対策も含む多様な犯罪対策推進を」と、鉄道事業者に対して訴えかけ続けてきた。

そして近年では実際に監視カメラを設置する鉄道事業者も全国的に増えてきている。

ならば憲法云々にもなりかねない、グレーゾーンの女性専用車両は廃止するべきと言いたくなるが、実際にはそのような話にはまったくならない。

まあ「女性専用車両の代替案」として監視カメラの設置を主張すると(JR埼京線での痴漢6割減の実績は無視して)「監視カメラごときに何ができる」「カメラには死角がある」「設置する費用が莫大だから無理(→実際はそうでもない)」「プライバシーの侵害だ」などと非難の声が上がる一方で「監視カメラの設置が進んでも女性専用車両の廃止にはつながらない」と分かると、そうした非難の声が聞こえてこなくなるという現状では代替策によって女性専用車両が廃止になることは期待できないだろう。

やはり少しでも多くの男性が実際に乗車して「任意という名の強制」を許さないようにし、女性専用車両を形骸化していくしか、今のところはないのではないだろうか。

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