当会では2024年3月19日の朝に熊本市電A系統で非協力乗車を行うことにしました。
熊本市交通局の公式サイト内の時刻表から女性優先車両の設置対象列車の案内(印)が消えたため、市電が女性優先車両を継続しているのかどうか分からなくなったので、その確認のためです。
以下、その報告です。
熊本市電で非協力乗車
今回乗車会をすることになったワケ
今回、久しぶりに熊本市電での非協力乗車を行う事となった。
このページをご覧の皆様もご存じの方は多いかと思うが、熊本市電を運行する熊本市交通局が2020年の9月に突然、わずか2両編成の市電に女性専用車両(後に女性優先車両と改称)を導入することを発表。
インターネット上では疑問や反対意見が多数上がり続ける中、マスコミは一貫して賛成の姿勢で「痴漢対策であること」を前面に出して報道し、さらに交通局に多数の反対意見が届いたことも「ほとんどが県外からの意見」などと理由をつけて切り捨てた。
そして約半年間の試験導入期間の後、交通局が行ったアンケート調査で「賛成が反対を上回った」として、翌2021年3月に「女性優先車両」と改称した上で正式導入が発表された。
一方、ちょうどその頃に熊本市議会の議事録で「コロナで人(乗客)が減っている中で、明るい話題を提供したい中、アイデアの一つとして・・・女性専用車両を導入したらいかがかなということで・・・」という趣旨の、交通事業管理者(要は交通局のお偉方)の2020年9月時点での答弁が公開されるなどした。(令和 2年第 3回都市整備分科会-09月17日-01号)
当会としても
「これは熊本市交通局が、最初から迷惑行為防止(痴漢対策)ではなく、コロナで乗客が減ったための減客・減収対策として、客寄せ狙いの女性専用(優先)車両を導入したという証拠に他ならない。表向き迷惑行為防止を謳っているだけで、痴漢対策・迷惑行為防止は真っ赤なウソ。公営の公共交通機関がそんなことをするとは言語道断だ!」
と強く批判し、交通局に訪問してまで抗議したが、その後も女性優先車両は運行され続けた。
最近では昨年(2023年)に5月と11月の二度にわたって市電のダイヤ改正が行われている。
昨年5月の改正時点では交通局サイト内の時刻表に女性優先車両設置列車を表す印があったのだが、同じ交通局サイト内の11月改正の時刻表では女性優先車両設置列車を表す印が無くなっている。(下記画像参照)
上が5月改正、下が11月改正の時刻表で、5月改正時刻表では女性優先車両のある列車が■または□で表示されているが、11月改正の時刻表ではそれがない(○印は低床車両を表すが、すべての低床車両に女性優先車があるわけではない。よってどの列車に女性優先車両があるのかがこの(11月改正の)時刻表では全く分からない)。
熊本市交通局サイトでは最近では女性優先車両のことは全く触れられておらず(過去の告知記事のみ)、また上記の通り昨年11月からはサイト内の時刻表からも女性優先車両の表示が消えたので、当会内では「もしや熊本市交通局は、告知せずに女性優先車両をシレっと廃止したのでは?」との見方も出てきた。
そこで確認のために熊本市電であらためて乗車会をすることになったのである。
ただ、乗車会をすることになったまでは良いが、上記で述べたとおり時刻表では優先車両設定列車が特定できないし、それどころか女性優先車両を今もやっているのかどうかさえ、インターネットではいくら調べても出てこない。
仕方が無いので、乗車会当日は朝7:30に熊本駅前電停に行き、そこで女性優先車両の表示のある列車が来るまで待つことにし、設定列車が確認出来なかった場合には交通局を直接訪問して女性優先車両を今もやっているのかどうか質問するということにした。
朝の熊本駅前電停に集合
乗車会当日の朝、予定通り7:30に参加者が熊本駅前電停に集合した。
電停のホームをざっと見回してみたが、女性優先車両の案内らしきものは全く無し。
時刻は電停内に立っているデジタルサイネージに表示されているようなので、それを見てみると時刻表の下に(近づいてよく見ないと分からないくらいの)小さな字で「平日7時~9時前後を運行する低床車両に女性優先車両がある」旨、表示されていた。どうやら女性優先車両は今も運行されているらしい。
そこでどの列車に設定されているのか見ようとしたが、これも全く目立たず、時刻の数字の横に小さく印がついているだけ。
つまり現地(電停)まで行き、このデジタルサイネージを至近距離でよく見ないと、女性優先車両設定列車の時刻はもちろん、女性優先車両が運行されていること自体さえ分からないということである。
普段からいつもこの時間帯に市電を利用している人にしか女性優先車両の存在が分からないようになっているのだ。
どうやら熊本市交通局はこのところ女性優先車両の存在をできるだけ隠す方向に動いているようだ。
田崎橋電停から乗車
さて熊本駅前電停のデジタルサイネージによれば、熊本駅前発8:01発と8:57発が女性優先車両設置対象とのこと。
8:01発に乗ることにしたが、まだ少し時間があるので市電の始発駅である田崎橋電停まで約500メートルほど歩くことにした。
線路に沿ってしばらく歩き、二本木口電停の横を通り過ぎるとすぐに田崎橋電停が見えてきた。
田崎橋電停のすぐ先で線路は終わっている。
田崎橋電停に掲出されていた駅時刻表によると、田崎橋7:54発(=熊本駅前8:01)が女性優先車両該当列車になるようだ。
田崎橋電停のホームでしばらく待っていると列車がやってきた。
列車に女性優先車両の表示が出ていないと思って見ていたら、車掌が車内に表示を貼り出し始めた。
車掌が女性優先車両の表示を車内に貼り終えるとドアが開き、私達も含め乗客が乗車。
車内は座席が埋まる程度。
私達は女性優先車両の座席に着席したが、周囲の乗客や車掌などからは声掛けなし。
そのまま田崎橋電停を発車。
田崎橋~健軍町
田崎橋電停を発車してすぐ次の二本木口電停に着く。そこでも少し乗車してきて、さらにそこから少し走ると先ほど私達がいた熊本駅前電停に到着する。ここで3分間停車。
ホームは多数の乗客が並んでおり、順番に乗ってきた。
車両のドアは女性優先車両の一番前の位置にある。つまり2両編成のうち、後ろの女性優先車両と前(優先車両でない方)の車両との境界近くに位置しているが、男性だけでなく女性も結構な数、乗ってきてから前の車両(優先車両でない方)へ移動していった。
一方、後ろの女性優先車両にも男性が数人乗車してきた。
車内はまだ押し合いへし合いにはなっていないが、結構混んできはじめた。
しばらく停車のあと、熊本駅前電停を発車。
女性優先車両に乗ってきた男性のうち1人は次の祇園橋電停で下車。
祇園橋電停の次の呉服町電停はホームが人の肩幅ほどしかない。
(呉服町電停で写真を撮ることが出来なかったため、この下に出した写真は同じ熊本市電の別の電停のものだが、熊本市電にはこのような電停がいくつもある)
余談ではあるが、熊本市交通局は将来、市電の急行運転も考えているという。
しかし、こんな人の肩幅ほどしかない狭いホームに人がいる状態で急行列車が通過していくというのは安全上いかがなものか。
以前の熊本での乗車会で呉服町電停から乗車したこともあるが、ホームに電車が入ってくるとすぐ目の前、わずか数十センチほどのところに電車が滑り込んできて(もちろんホームドアなどもあるはずがない)現状でも決して安全だとは言えないが、通過列車となるとなおさらである。
わずか2両編成の市電の1両を女性専用(優先)車両にしようという「とんでもない話」になったのも、熊本市交通局のこうした体質もあるのではないだろうか?
(2両中1両を女性専用車両にしても、元々混雑が前の車両に偏りがちな事もあり、当初懸念されたような混乱は「たまたま」起きなかったが・・・)
ちなみに交通局は女性優先車両を設けたのも表向き「迷惑行為防止の一環として」と言っているが、実際には熊本市議会の議事録に「コロナで人が減っている中で、いろいろな話題を提供したい、明るい話題を提供したい」と交通局のお偉方が答弁しているのが記載されているのは先述の通りである。
公営の公共交通機関がアパルトヘイトまがいの施策をするのが明るい話題? と突っ込みたくもなるが「迷惑行為防止の取り組み」という理由は「後付け」であり、本当の理由ではない。
「迷惑行為防止」は表向きの理由だ。
熊本市交通局サイトに掲載されていた「女性優先車両試験導入の背景」(=表向きの理由)↓と市議会議事録の内容↑を見比べてみれば議事録に残っていた「本当の理由」と交通局の言う「表向きの理由」がいかに乖離しているかよく分かる。
さて列車は河原町電停、慶徳校前電停を過ぎ、この辺りから熊本市街の中心部に入ってくる。
辛島町電停で多数の乗客が降り、車内はまだ立ち客がいるものの少し空いてきた。
男性が3人くらい女性優先車両の前の方にいたが次の花畑町電停で降りた。
この辺りから前の車両まで見通せるくらいの乗車率になってきた。
女性優先車両も前の車両もそれほど混雑差はないようだが女性優先車両内の男性は私達だけになった。
熊本城・市役所前電停でふと見ると、女性優先車両と前の車両の間くらいに男性が1人。
通町筋電停でも男性2人乗車、うち1人は前の車両に移動したが、もう1人が車内に留まった。
引き続き列車は熊本市街の中心部を走る。
次の水道町電停で何人か降りて、女性優先車両、前の車両とも立ち客がほぼ居なくなる。
九品寺交差点電停から空席も出始めた。車内には私達以外に2人の男性客がいる。
交通局前電停で少し乗車があり、再び座席が埋まった。
女性優先車両の前の方にいた男性客2人が後ろに移動して着席。
味噌天神前電停。ここもホームが人の肩幅程。
車内は座席が埋まり立ち客が数名程度。
新水前寺駅前電停手前で、車掌が「只今の時間、後ろの車両は女性優先車両です。ご協力をお願いします」
とアナウンスした。
男性の着席が目立つようになって来たからだろうか。ただし誰も移動しなかった。
ふと見ると、新しく男性の立ち客が乗車していた。これで私達以外に男性が3人。
ただしその男性の立ち客は次の電停で降りた。
神水交差点電停(神水・市民病院前から改称)手前の時点でもまだわずかだが立ち客がいる。
通町筋電停からの男性客はまだ着席している。
いつの間にか女性優先車両内の男性は私達とその男性客だけになっていた。
神水交差点電停を出て、女性優先車両内は空席が出始めた。
前の車両も同様のようだ。
終点一つ手前の健軍交番前電停を出ると、車掌が女性優先車両の掲示を手で外し始めた。
8:55に終点健軍町電停着。
通町筋電停からの男性は最後まで女性優先車両にいた。
結局、乗務員や他の乗客からの声掛けはなかったが、実際に現地に赴いた事により交通局が女性優先車両の存在を、実際に乗車した客以外にはなるべく知らせないようにしていることが分かった。
また、予定していた交通局訪問は女性優先車両が現在も運行されていることが確認出来たので今回は無しとした。
乗車会としてはここで終わりだが、列車を降りたあと駅前のミスタードーナツに入り、一息入れたあと私達は熊本駅前電停まで乗車して戻る(女性優先車両設定時間は過ぎたので、単なる移動)ことにした。