関西本部では、7月下旬の土曜日にJR大阪環状線で非協力(任意確認)乗車会を行いました。
「女性専用車両に強制力はなく、任意協力である(=女性専用と名乗りつつ、実は専用ではない)」ということは、以前に比べ、かなり知れ渡って来たとは思われますが、鉄道事業者がそれを隠しつづけているため、まだまだ知らない人が多いのも事実。
今回、そうした「無知な女性客」が声をかけてきて、ちょっとしたトラブルになりました。
以下、その報告です。
無知な中年女性が声掛け
事実に反する、「女性専用」表記も問題
福島駅付近で、女性客が声掛け
今回は午前11時30分に、JR大阪環状線・野田駅のホームに集合。
集合時刻になるまで、ホームに発着する電車を眺めていたが、女性専用車両から、1人の男性客が降りてきたことを確認。
私達以外にも、乗車している男性はいるようだ。今日も女性専用車両が実施されていることを知って乗車していたのかどうかまでは分からないが・・・
しばらくして、野田11時42分発の大阪・京橋方面(外回り)の列車が到着したので、その女性専用車両に乗車。
車内は比較的すいており、ところどころ座席に空きがある状態だった。
次の福島駅で、何人か乗客が下車し、私達の近くの座席が空いたので、乗車会参加者のうち2人が座ったところ、向かいの座席に座っていた中年女性客が、「ここ女性専用車両ですよ」と声かけしてきた。
車内で喧嘩をするのが目的ではないので、第一声目は無視したのだが、それでも何とかして私達を移動させたかったらしく、今度は「日本の方ですか?」などと言ってきたので、仕方なく応対することにした。
会員1:知ってますよ、あくまで任意ですので。
女性客A:ここは女性専用車両と決まっています。
会員1:決まっていません。法律どころか、JRの輸送約款にも載っていません。
女性客A:法律で決まっています。
会員1:決まっているというなら、何という法律で決まっているのですか?
女性客A:……(隣にいた女性客Bと、顔を見合わせて、何やらブツブツ…)
会員2:法律で決まっていませんよ。嘘だと思うんだったらJRの駅員に聞いてみてくださいよ。
女性客A:放送を聞いてたら言いますよ! 土日も女性専用車両やってます!
会員1:あくまでも任意です。
会員2:あなたに言われる筋合いはありません、任意なので強要しないでください!
だいたい、属性(=性別や人種など)を理由に排除しようとすること自体、人権侵害ですよ!
女性客A:何が人権侵害やねん…(と、ふてくされたような表情を浮かべ、再び、隣の女性客Bと顔を合わせ、何やらブツブツ…)
この女性客A、状況からして、どう考えても痴漢対策で女性専用車両を利用しているとは思えず、明らかに女性専用車両を「女性の権利」と勘違いして、自らの縄張りを主張していたようだが、これ以上やり取りしても仕方ないと思ったのか、それ以降は黙って乗車していた。
ちなみに後でツイッターを検索したところ、その女性客Aの隣にいたもう一人の女性客(=女性客B)のものと思われるツイートを発見した。
内容としては、
>女性専用車両で男性グループが、果敢にも注意をしているご婦人に対して、法律で決まっているのかとか、人権侵害だと主張している。
後になって言えば良かったとか考えている私。後になって考えても意味ないよね。
というようなものだった。
以下、ツイート内容に反論しておく。
>果敢にも注意しているご婦人に対して
何が、「果敢にも」なのだろうか?
単に、私達に文句を言ってきた女性客Aが無知で勘違いなだけである。
「注意をしている・・・??」
JRの職員ですら、注意ではなく「お願い」しかできないのに、何を勘違いしているのか?
女性専用車両は「専用と名乗りつつ、実は任意協力でしかない」から、JR職員であっても「お願い」しかできないのである。
つまり、乗客が「本当に女性専用」だと勘違いしてくれることを期待して、鉄道事業者が「女性専用」という名前にしているだけなのに、ツイート主の女性客Bはそれに全く気づいていないのだ。
もっとも、これはとっくの昔に「女性専用と名乗りつつ、実は女性専用ではない」ことがバレているにもかかわらず、いつまでも車体にでかでかと「女性専用車両」などと表示し続けているJR西日本にも、責任の一端はある。
現憲法下では、女性専用車両を強制にすることは出来ない。
それだけ女性専用車両自体が問題あるものだということだが、それを鉄道事業者が、「女性専用と表記しつつ、任意」などということをするから、こういう問題が生じる(「乗るな」と言ったところで、男性の乗車は禁止出来ない)。
まあ、鉄道事業者からすれば、私達のような、「あえて女性専用車両に乗る反対派」などは、「想定外」だったのだろう。
>後になって言えば良かったとか考えている私
女性客Aに加勢して、トラブルを大きくしたところで、「男性も実は乗れる」という事実は変わらないし、下手をすれば電車が遅延したり、最悪(もし私達に手を出したりすれば)警察に突き出される羽目になる。
もちろん、私達が女性専用車両に乗車すること自体、何の違反でもない(むしろ、同じ運賃を支払って公共交通機関を利用しているのに、乗る車両を制限される方が問題)。
鉄道事業者が「女性専用車両」と表記しているがために、何も知らない女性客が声をかけてきてトラブルになり、電車が遅延したとしても、それは声をかけてきた女性客が起こしたトラブルであり、遅延の原因はその女性客と、事実と異なる表記をする鉄道事業者自身ということになる。
今回は、女性客Aが途中で引き下がったのと、女性客Bや他の周囲の女性客が加勢してこなかったので、大きなトラブルにはならなかったが、もし女性客Bが女性客Aに加勢していたら、大騒ぎになっていたかもしれない。
また、もしそうなったとしても、悪いのは先にも述べた通り、ウソ表記をして女性客らに正しい情報を伝えない鉄道事業者である。
>後になって考えても意味ないよね
後でなくても意味はない。
女性客Aに加勢したところで所詮、男性を「男性である」というだけで排除出来ないことに変わりないのは、先に述べた通り。
大阪~西九条
・・・さて、福島からしばらく走って、列車は大阪駅に到着、ここで多くの乗客が入れ替わるが、女性客Aは引き続き乗車するようだった。
大阪駅でしばらく停車したのち、発車。
次の天満駅では1人の男性客が乗ってきたが、女性客Aは下を見ながら黙々と座っており、その男性客には声をかけなかった。
桜ノ宮・京橋・大阪城公園・森ノ宮・玉造と、特に何もないまま過ぎていき、鶴橋駅で私達の向かいの座席に座っていた女性客Aは降りていった。
ここでふと遠くを見やると、車内の向こうのほうで中学生か高校生くらいの恋人らしき2人組が乗っていることに気がついた。
寺田町駅では、スーツ姿の男性客が入ろうとしてすぐに立ち止まり、隣の車両に移動した。
「別に移動しなくていいのに…」と私達で話していた。
次の天王寺駅で車内は一気にガラガラに。
ガラガラのまま、新今宮・今宮・芦原橋・大正と過ぎ、弁天町駅では、1人の男性客が乗車。
他にもう1人の男性客が車両を通り抜けて行った。
今回は、野田駅から120円切符での大回り乗車のため、西九条駅で降りて解散。
乗車会はここで終了となった。
痴漢対策? 弱者保護??
さて、今でも女性専用車両がなぜ設置されているか、多くの人は「痴漢対策」だとか「弱者保護」だと思っていると思う。
賛成派はもちろん、反対派の中にもそう思っている人は、少なくないのではないだろうか?
しかし、この日遭遇した女性客Aのような、どう考えても痴漢対策で女性専用車両を利用しているとは到底思えない女性客が多いのも、また事実。
実際に女性専用車両を利用している女性客の大半が、「空いてて座れるからいい」「臭いオヤジがいなくていい」などの、痴漢対策とは全く関係のない理由で利用しているというデータもある。
しかも、当会がこれまで度々指摘してきたとおり、女性専用車両では痴漢は減らない。
例を挙げると、
●JR中央線=導入前2004年・188件 → 導入後2005年・217件(29件増加)
●京王線=朝夕ラッシュ時拡大前(深夜のみ)2004年・121件 → 朝夕ラッシュ時拡大後2005年・146件(25件増加)
いずれも朝日新聞2006年8月8日掲載分より
※この他、名古屋市営地下鉄東山線でも、導入後、痴漢件数が逆に増えたことが、新聞報道されている。
※昨年(2017年)に当会が京阪電鉄の本社を訪問して抗議した際も、女性専用車両で痴漢が減ったのか尋ねたところ、担当者が「ウチは増えてますね」と認めていた。
※上記以外にも、女性専用車両で痴漢が減っていないというデータは多数あり。
女性専用車両で痴漢が減れば、「女性専用車両の効果」
増えれば、「女性が勇気をもって被害を申し出るようになった」・・・
結局、どちらに転んでも「女性専用車両は効果がある」と強引にこじつけているだけなのが分かる。
「女性が勇気をもって被害を申し出るようになったから件数が増えた」のなら、逆に件数が減った場合は、「泣き寝入りが増えた」ことになってしまうが・・・
それに、「最初から、痴漢を減らすことが目的ではなく、避難場所(シェルター)を設置するのが目的だった」のなら、このような「女性が勇気をもって被害を申し出るようになったから件数が増えたのではないか」などという言い訳は必要ないはずである。
また報告書内で、女性専用車両導入前後の比較として「全体の痴漢件数」をデータとして出しているあたりからも、全体での痴漢件数が減ることを想定して導入実験がなされたものであることが分かる。
つまり、「痴漢が減る」と思って女性専用車両を導入したら、実は思ったように減らなかった(路線によっては逆に増加してしまった)ため、後から「女性専用車両は痴漢を減らすためのものではなく、避難場所として設けられたもの」だということにして「痴漢の減らない女性専用車両」を、(後付けの言い訳で)正当化したものと考えられる。
反対派から、「女性専用車両で痴漢が減らない」ことを指摘されると、「女性専用車両は痴漢被害者が避難するためのシェルターとして設置されたものであって、痴漢を減らすためではないのは自明なのだから、痴漢が減らないと言って女性専用車両を批判するほうがおかしい」などと、自信満々に反論してくる賛成派がいるが、これは「痴漢対策の手段として女性専用車両を主張している」のではなく、「女性専用車両を守ること自体が目的」で、「女性専用車両を守るための手段として、痴漢対策やシェルター論を唱えている」ということではないだろうか?
また、女性専用車両で痴漢が減らないということは、痴漢する輩は他の車両でやりたい放題であるということであり、「女性専用車両があっても痴漢は何も困らない」ということでもある。
そう考えていくとむしろ、痴漢を撲滅する気がないのは、やたらと女性専用車両に固執している、一部の賛成派といえるのではないだろうか?
当会はこれまでからも、JR埼京線で実績を残した車内監視カメラや私服警官の付き添い乗車など、有効と思われる痴漢対策を提唱し続けてきた。
当会は決して、痴漢対策に反対しているのではない。
痴漢対策を名目にした、公共交通機関における差別に反対しているのである。