先日(2015年3月23日)より新たに、およそ防犯対策とは思えない女性専用車両が、阪急宝塚線で運行開始されました。
当会ではそれに先立ち、2015年3月1日に阪急梅田駅に直接出向き、抗議を行いました。
そして、その際に抗議した内容について、その後再び阪急本社から回答がありました。
以下、当日参加したメンバーからの報告です。
なお、今回のこのページは、今年1月分の活動報告のページの続きになるのでまだ読んでいない人はまず先にそちらから読んでいただければ幸いです。
阪急梅田駅に直接抗議
痴漢対策とは思えない宝塚線女性専用車両導入に抗議
阪急梅田駅に集合
2015年3月1日、私達は阪急梅田駅に集合した。
公共交通機関でありながら、同じ運賃を支払っている男性客を男性であるというだけで事実上排除し、それを痴漢対策のためのやむを得ない措置としてではなく、「人にやさしい魅力ある鉄道サービス」と自らのHPで平然と公言した上、こちらからの意見書(抗議)にも都合の悪いことには一切答えず、反論できそうな所を見つけてそこだけ反論してくるという、腐りきった対応をする阪急に対し、直接抗議を行うためである。
集合場所に続々と当会メンバーが集まり、多人数で駅長室か駅事務所に向かおうとしたが、それらしきものはなく、ところどころに案内所(information)があるだけなので、案内所の一つに入り、駅長室や駅事務室の類はないのかと尋ねたところ、どうやら梅田駅では案内所が事務室のようなものであるらしい。
そこで私達は、梅田駅3F改札口の近くにある案内所で抗議を行うことにした。
対応したのは阪急電鉄のK営業助役。
私達からは、
- (阪急は)女性専用車両が差別であると認識しているか?
- 女性専用車両は大阪府男女共同参画条例(兵庫県も絡むかもしれないが・・・)の条文に触れるのではないか?
- 喫煙や携帯通話は、本人の意思でするしないを決められるが、性別という本人の意思で変えられない「属性」で特定の車両から人を締め出すのは、人種という「属性」で黒人を排除したアパルトヘイトと同じではないのか?
- 阪急のHPには「人にやさしい魅力ある鉄道サービスを実現するための、サービス向上策の一環」などと書かれているが、これは「痴漢対策ではない」ということなのか?
- 公共交通機関であるなら、同じ運賃を支払えば誰でも公平に利用できるのが原則だが、「サービス向上策」として女性専用車両を拡大するのは問題では?
などの疑問・質問を投げかけた。
上記のうち下2つは、これまで何度も当会から質問しているにもかかわらず、阪急側がスルーしている質問である(つまり、「阪急は聞かれても答えられないようなことをやっている」と思われても仕方がない)。
今回もまたスルーするだろうとも思われたが、敢えてしつこく質問してみた。
K営業助役は、「私は本社の者ではないので、会社としての見解ではなく、あくまで私の個人的な意見として述べることしかできないが・・・」と断った上で、私たちの投げかける疑問・質問に答えていた。
結局、私達が訪問したことを本社に報告すると同時に、私たちが投げかけた疑問・質問について、「改めて本社から回答する」ということで、後日本社から郵便で回答をいただくことになった。
阪急からの回答
しばらくして、阪急から当会に返信が来たが、やはり私達が投げかけた質問にはほとんどまともに答えず、反論できそうな所だけ反論してくるという、ふざけた対応をしてきた。
やはり、こういった対応をしておけば、そのうちこちらが諦めるだろうと思っているのだろうか。
福山博様
拝啓 時下ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。
平素は、阪急電鉄をご愛顧いただきまして、誠にありがとうございます。
早速ではございますが、再度いただきましたご意見について回答させていただきます。
弊社の女性専用車両の考えからにつきましては、前回と重複した回答となりますが、国土交通省が「男女共同参画社会へ向けて女性の社会進出を支える環境づくり」の一環として提唱したことを受け、女性のお客様に対する痴漢等の迷惑行為防止に有意義であると判断し、実施しております。
現在では、多くのお客様からご支持を頂戴していること、警察が迷惑行為防止に有効な施策の一つとして導入を提言されており、すでに多くの鉄道会社で導入されていることから、社会的にも定着しているものと考えております。
また当該施策は、男女差別には当たらず、法的にも問題ないものと考えております。
なお、「車内防犯カメラを設置しないのは費用の問題ではないのか」というご指摘につきましては、弊社の考え方は前回の回答の通りですが、この件に関わらず、あらゆる企業活動においてコストも勘案しながら施策を決定しておりますことを申し添えます。
福山様におかれましては、貴意に副えない回答で申し訳ございませんが、事情ご賢察の上、何卒ご理解賜りますよう、また、今後とも阪急電鉄をご愛顧くださいますよう、よろしくお願い申し上げます。
2015年3月9日
敬具
運輸部
まず、私達が投げかけた質問のうち、
- 阪急のHPには「人にやさしい魅力ある鉄道サービスを実現するための、サービス向上策の一環」などと書かれているが、これは「痴漢対策ではない」ということなのか?
- 公共交通機関であるなら、同じ運賃を支払えば誰でも公平に利用できるのが原則だが、「サービス向上策」として女性専用車両を拡大するのは問題では?
この2つには、今回もやはり「全く触れていない」。
先にも述べた通り、この2つは以前から何度もしている質問だが、何度質問されても全く何も答えないということは、「答えられない」と解釈されても仕方がない。
つまり阪急は、「女性専用車両を痴漢対策ではなく、他の目的でやっているのだろう」と何度突っ込まれても「否定しない」のだ。
これまでの、「都合の悪いことにはまったく答えないが、反論できそうな所を見つけて、そこだけしっかり反論してくる」という阪急の対応から考えて、もし否定できるのなら、真っ先に否定して来ているだろう。
これでは阪急の女性専用車両は、世間が「女性専用車両は痴漢対策」と思いこんでいるのを良いことにした、「女性優遇サービス目的車両」なのだと解釈されても仕方がない。
- (阪急は)女性専用車両が差別であると認識しているか?
- 女性専用車両は大阪府男女共同参画条例(兵庫県も絡むかもしれないが・・・)の条文に触れるのではないか?
- 喫煙や携帯通話は、本人の意思でするしないを決められるが、性別という本人の意思で変えられない「属性」で特定の車両から人を締め出すのは、人種という「属性」で黒人を排除したアパルトヘイトと同じではないのか?
これらの質問についても、
当該施策は、男女差別には当たらず、法的にも問題ないものと考えております
としか答えていない。
「なぜ差別に当たらないのか」「なぜ法的に問題ないのか」という理由については全く答えず、さらに、「アパルトヘイトと同じではないのか?」という質問については質問自体を無視。
さらに、「車内防犯カメラを設置しないのは費用の問題ではないのか」などというような指摘など、こちらからはしていないにも関わらず、
なお、「車内防犯カメラを設置しないのは費用の問題ではないのか」というご指摘につきましては、弊社の考え方は前回の回答の通りですが、
この件に関わらず、あらゆる企業活動においてコストも勘案しながら施策を決定しておりますことを申し添えます。
などと当会に対し、「君らは企業活動の基本も理解出来ないのか?」と言わんばかりの回答をよこしている。
これについては後で反論するとして、なぜこのような回答が返って来たのか、後で当日参加したメンバーに確認したところ、参加メンバーの一人がK営業助役に対し、
阪急が監視カメラ設置に対して「費用がかかる」だとか、「混んでいると肝心の部分が映らないから」などと言うが、それは本気で対策する気がないからではないのか?
大阪市交通局なども女性専用車両にはカメラをつけない(防犯に本気ではない)が、バスは全車ドライブレコーダーをつけている(事故の時自分の過失のなさを証明したい?)。要は車内犯罪防止に本気ではないからカメラをつけたがらないのではないのか?
というようなことを言っていたらしい。
しかしこれとて、「監視カメラを設置したがらないのは、本気で防犯対策する気がないからだろう」という指摘であって、「阪急は費用が掛かるから監視カメラを導入したがらないんだろう」とは言っていない。
言い換えれば、「費用云々」はカメラを導入したくないがために、「設置位置の問題」「混雑した車内での防犯カメラの有効性等の課題」などと、いろいろな言い訳をしているうちの一つに過ぎないのであって、こちらが指摘しているのは、阪急が「本気で防犯対策する気がないのだろう」ということである。
(私達が言葉で言ったことをK営業助役がその場でメモして本社に伝えたものなので、その際に行き違いが生じた可能性はあるが・・・)
よく、鉄道事業者は監視カメラは「莫大な費用が掛かる」などと言って、監視カメラの設置を拒否するが、では駅構内に設置されている、多数の監視カメラ(下の写真)はどうなのか?
これも「莫大な費用」が掛かっているのか?
それとも、駅構内に設置しているカメラを車内に設置すると「費用が莫大になる」のか?
もっと言えば、島根県の一畑電鉄という赤字ローカル線でさえ、車内に監視カメラを設置している。
これでは、「監視カメラは莫大な費用が掛かる」というのは、監視カメラ設置を拒否するための言わば、「方便」であると思わざるを得ない。
それに、阪急がもし本気で防犯対策に熱心ならば、本当に少々費用が掛かるとしても、「埼京線で痴漢件数6割減」の監視カメラに飛びつくはずである。
まあ、女性専用車両と監視カメラを同時に併設すれば費用はかさむかもしれないが、当会は「女性専用車両は廃止して、監視カメラに置き換えよ」と言っているのであるのであって、「併設」など求めていない。
女性専用車両を廃止すれば、女性専用車両に関わる費用が全て浮くはずである。
そして、繰り返しになるが、阪急は女性専用車両を「サービス水準向上のための一施策」としており、痴漢対策とは言っていない。
そして監視カメラについては、出来なくはないはずなのに、何かと理由をつけて拒否し続けている。
これでは「女性専用車両に熱心」なだけで、「防犯対策に熱心」なわけではないのだろうと言われても仕方がない。
阪急の回答に対する反論
先にも少しふれた通り、ここで阪急の回答に対して反論しておこう。
国土交通省が「男女共同参画社会へ向けて女性の社会進出を支える環境づくり」の一環として提唱したことを受け、
女性のお客様に対する痴漢等の迷惑行為防止に有意義であると判断し、実施しております。
「痴漢等の迷惑行為防止に有意義であると判断している」というのなら、HPに「痴漢対策にご協力を」と、ストレートに書けばよいのに、なぜ、「人にやさしい魅力ある鉄道サービスを実現するためのサービス向上策の一環」などと書くのでしょうか?
「痴漢対策と書けない理由」でもあるのですか?
「人にやさしい魅力ある鉄道サービス(とHPに書く)ということは、痴漢対策ではないということか?」と、当方から何度質問されても無視して答えないということは、「女性専用車両≠痴漢対策と言われても否定できない」と解釈されても仕方がないということです。
違うというなら是非反論していただきたいものです。
現在では、多くのお客様からご支持を頂戴していること、警察が迷惑行為防止に有効な施策の一つとして導入を提言されており、すでに多くの鉄道会社で導入されていることから、社会的にも定着しているものと考えております。
「社会的に定着している」から、何も悪いことをしていない男性を、男性であるというだけで排除しても良いというのなら、これは「黒人を黒人であるというだけで排除しても良い」という、アパルトヘイトの思想と同じです。
また当該施策は、男女差別には当たらず、法的にも問題ないものと考えております。
女性専用車両が男女差別にも当たらず、法的にも問題ないというなら、理由を示さなければ説得力がないですね。
なお、「車内防犯カメラを設置しないのは費用の問題ではないのか」というご指摘につきましては、弊社の考え方は前回の回答の通りですが、この件に関わらず、あらゆる企業活動においてコストも勘案しながら施策を決定しておりますことを申し添えます。
前回の回答(1月の活動報告参照)で貴社が、(監視カメラは)「設置位置の問題、混雑した車内での防犯カメラの有効性等の課題があることから、導入は難しい」と回答したのに対し、当会側から反論されたから、今度は「コスト」ですか?
「あらゆる企業活動においてコストも勘案しながら・・・」とのことですが、では貴社は「コストが掛かるから」という理由で、列車の安全運行にかかる費用を「自社の利益に直接つながらないから」といって、出そうと思えば出せるのに出さず、安全管理を怠るのですか?
当会は、「車両を豪華にしろ」などと言っているわけではございません。
女性専用車両を「サービス向上策」と称して導入し、防犯対策として実績のある監視カメラを拒否する貴社に対し、「きちんと義務を果たせ」と申し上げているのです。
3月23日から実施の女性専用車両について
当初の発表通り、3月23日から平日朝の宝塚線で女性専用車両が運行されることとなったが、ツイッターからの情報や、個人的に朝の宝塚線で非協力乗車した当会会員からの報告によれば、女性専用車両と隣の非女性専用車両とで、かなり混雑差があるとのことである。
前回(1月の活動報告参照)、私達が出した抗議文に対して、阪急は「女性専用車両と他の車両で乗車率に差はなく、女性専用車両設定による影響はないと考えております」などと回答してきていたが、実態は違うようだ。
もちろん、女性専用車両の本質的問題は、「アパルトヘイトと同様の、属性による公共の場からの排除である」ということであり、混雑率の差はあくまで「導入した結果生じた問題点」である。
だから、仮にそれが解消されたからといって、「女性専用車両に問題はない」ということにはならないが、これまで繰り返し述べてきているように、阪急は同じ運賃を支払っている男性客に対し、乗車する車両を制限した上、より混雑した車両に乗らなければならないようにしておきながら、女性専用車両を「人にやさしい魅力ある鉄道サービスを実現するためのサービス向上策の一環」などと、平然と公言している。
つまり、阪急の言う「人にやさしい魅力ある鉄道サービス」という言葉の”人”のうちに、男性客のことは入っていないのだ。
きちんと運賃を支払って電車を利用している男性客の立場をどこまでも蔑ろにする阪急のこのような態度を、絶対に許してはならない。
ここで引き下がってしまえばこの先、これが「当たり前」になってしまう。
しかし、ここまでご覧いただいたとおり、いくら阪急に抗議したところで、阪急にまともに取り合う姿勢は全く見られない。
恐らく阪急は反対派が諦めるのを待っているのだから、実際に女性専用車両に男性がどんどん乗車して行くしかない。実際に行動を起こし、粘り強くそれを継続していくしかないのである。
当会の活動は、より多くの人数を必要とする活動である。
当ページをここまでご覧になった皆様の中で、「阪急の態度は許せない」と思った方は、是非当会に入会して、私達の活動に参加してほしい。心の中でいくら不満に思っていても、それだけでは何も変わらないのだから・・・