2018年4月 関西本部:大阪メトロ御堂筋線 非協力乗車会

2018年4月から大阪市営地下鉄は民営化され、「大阪メトロ」と名前が変わりましたが、民営化後、女性専用車両に対する姿勢はどのように変化したのか(するのか)?

それを見る意味もあり、民営化後すぐの4月上旬に、御堂筋線で乗車会を行いました。

以下その報告です。


大阪メトロ移行後、初の非協力乗車

民営化によって、女性専用車両に対する姿勢はどう変わるのか?

天王寺駅で状況観察

大阪市営地下鉄はこの4月(2018年4月)から民営化され、「大阪メトロ」と名前が変わった。

今回、当会としては、大阪メトロが民営化してから初の御堂筋線乗車会となる。

今回は、天王寺に19時集合。集合時刻になる前にホームでしばらく、発着する列車を何本か観察していたのだが、男性客が時々、女性専用車両に乗車しているのが確認できた。

また、近くにいた当会メンバーによると、「当日の朝にも個人的に非協力乗車したが、声掛けなど特に異状はなかった」とのこと。

先日、(2月下旬ごろ)関東で活動している市民団体、「差別ネットワーク」の非協力(任意確認)乗車活動が、マスコミ等で大きく取り上げられ、世間にも非協力(任意確認)乗車活動が大きく知れ渡ることとなったわけだが、そんな中で各鉄道事業者はどう対応してくるか、さらにここ、大阪メトロでは民営化も控えていたため、どう対応してくるか・・・というのがあったのだが、ここまでのところ、どうやら改めて女性専用車両からの男性排除に力を入れてきたというようなことはないように見える。

しかし、これは大阪市営地下鉄だったころからずっとそうだが、大阪メトロは女性専用車両に車体広告を出し、広告料収入を得ている。

また、一時期、車体だけでなく、女性専用車両の座席にまで広告を出していたことがあった。

車体全体に広告を出している、御堂筋線の女性専用車両(写真内、向かって右)

明らかに、女性専用車両を広告媒体として、営利目的に利用しているわけだが、大阪市交通局はずっと、「女性専用車両は痴漢被害から女性客を守るためのもの」だと回答し続けてきた(詳しくはこちらを参照)。

大阪市交通局(大阪メトロ)に限ったことではないが、女性専用車両限定広告というのは、明らかに営利目的であり、そのようなものを痴漢対策と称して運行している時点ですでに問題である。

しかも、これは単に「鉄道事業者が女性専用車両を金儲けに利用しながら、痴漢対策などとウソをついている」というだけの話ではなく、広告代理店や、広告を出した広告主などの利益にもなる(女性しかいない場所に女性向け広告を出すと、宣伝効果が高いとされる)ことであり、各方面と連動しているといえる。

女性専用車両にある交通広告をご紹介! | 株式会社春光社 | 交通広告代理店
こんにちは!営業部の東です。 今日はとてもお問合せの多い 「女性専用車両」に設定されている交通広告の媒体をご紹

今や、女性専用車両は「ビジネスの道具」なのだ。

しかし、表向き「痴漢対策」と言っておけば、世間はそれで納得してしまう。

また、「性別」という、本人の意思や努力ではどうすることも出来ない、「属性」を理由に公共交通機関の特定の車両から男性を締め出そうとするような、アパルトヘイトまがいのことをしておきながら、法的な問題をかわすため、女性専用車両を建前上、「任意協力」にしておいて、乗客にはそれを「可能な限り知らせない」ということを鉄道事業者はしているわけだが、これも「痴漢対策のため、やむを得ず女性専用車両をやっている」といえば、明確に女性専用車両に反対の意思を持っている人間でない限り、やはりうまくごまかされてしまうだろう。

私達は、このような偽善に対して異を唱えているのであり、女性に対する憎悪などで活動をしているのではない。

しかし、「女性専用車両=痴漢対策」ということにしておけば、私達のように女性専用車両に異を唱える者を、逆にいくらでも悪者に出来てしまう。

これまでからも繰り返し述べているが、私達は「痴漢対策をするな」とは言っていない。

実際にJR埼京線での効果実績のある監視カメラをはじめ、私服警官の付き添い乗車など、痴漢防止の案をいろいろと提唱しているが、痴漢の減らない女性専用車両にこだわっているのは、一部の賛成派のほうである。

さて、これまで大阪市交通局では、〇印に「コ」の字を重ねた、いわゆる「マルコマーク」が使用されてきたが、大阪メトロになって、そのマークも新しくなるとのことで、一部の駅では駅の掲示類などを新しいマークのものに付け替えるなどしたようだ。

大阪市営地下鉄の車両のマルコマーク
新しく設定された大阪メトロのマーク

しかし、天王寺駅に到着する列車を見ていると、(乗車会当日の時点では)まだ車両には「マルコマーク」がついたままで、また車内のモニター画面にも、マルコマークが表示されていた。

今後更新されていくのだろう。

天王寺~新大阪(往路)

集合場所に当日参加予定の会員も集まったので、19:23発の天王寺始発の列車(新大阪行)に乗車し、全員着席した。

天王寺始発のせいか、乗客は私達以外に、パラパラと数えられる程度。

やや遠くのほうに、男性客が一人乗車しているのが見えた。

天王寺駅を発車し、次の動物園前でも、男性客が一人乗車してきたが、すぐ移動してしまった。

大国町を過ぎ、列車は大阪・ミナミの中心地である、なんばに到着。

多数の乗客が乗ってきて、ガラガラに空いていた車内は一気ににぎやかになった。

乗車してきた乗客の中に、2~3人程度の男性客が混じっていることを確認。

そのうち一人は座席に座った。

次の心斎橋駅でも、さらに乗客が乗ってきて、車内は立ち客が多くなってきた。

そして次の本町では、立ち客が多くなって車内が見渡せなくなった。

本町を出たところで、「大阪市営地下鉄は、大阪メトロとして生まれ変わりました」という車内アナウンスが入った。
淀屋橋を出ても、車内は結構な乗車率のまま、今度は「大阪メトロでは、迷惑行為や犯罪の防止に取り組んでいます。

痴漢は犯罪です」とアナウンスが入った。

これは、大阪市交通局だったころからずっと行っているアナウンスだが、もちろん犯罪の防止(ここで言っているのは恐らく痴漢行為のことだろう)に取り組むのは大いに結構なことである。

しかし、先にも少しふれたが、大阪市営地下鉄は、女性専用車両を広告料収入源として、大いに利用してきたという経緯がある。

「御堂筋線で、女性専用車両を終日やっているから、大阪市交通局(大阪メトロ)は、痴漢対策に熱心に取り組んでいるのだろう」などと勘違いしてはならない。

やがて、列車は大阪・キタの中心地である梅田に到着。

ここで多くの乗客が一斉に下車し、車内は一気に空いた。

車内が空いたので、遠くの方を見てみると、男性客が確認できるだけで2人、座席に座っているのが見えた。

ここまで見た限りでは、御堂筋線も結構、男性が乗車することが珍しくなくなってきているようだ。

しかし、まだまだ世間の人々の多くは「女性専用車両=痴漢対策」と思っているだろうし、また、「任意協力」だと分かっていても、「男性は乗らないのが常識」だと思っている人も少なくないと思われる。

実際に女性専用車両に乗車している男性でも、任意と分かって乗っている人は実際のところ、どれだけいるのだろうか?

これからもまだまだ、活動は継続して行かなければならないだろう。

梅田の次の中津を出て、しばらくすると、御堂筋線は地上に出る。

御堂筋線と並行する道路(新御堂筋)の車と並走しながら、西中島南方駅を過ぎ、この列車の終点新大阪に到着。私達も下車した。

新幹線との連絡駅でもある新大阪だが、やはり夕方のラッシュ時とあってか、ホームは人でいっぱいであった。

今回は、ここで天王寺方向に折り返しの予定だが、とりあえず切符を買いなおすため、一旦改札から出ることにした。

御堂筋線新大阪駅のホーム。夕~夜間のラッシュ時ということもあり、人でごった返していた。

新大阪~天王寺(復路)

一旦改札から出た私達だが、ここで交通局が今月から大阪メトロに移行したばかりだという事で、改めて「女性専用車両に男性も乗れるかどうか」を確認するため、新大阪駅の案内所を訪ねることにした。

新大阪駅の改札

案内所もそれほど広いわけでもなく、また他の乗客の方が来られるかもしれないので、乗車会の参加者のうち、3人が案内所に入り、残りのメンバーには外で待ってもらうことにした。

対応したのは、新大阪駅のT助役。

会員:女性専用車両ってありますが、あれって男性も乗っていいんですよね?

T助役:一応は痴漢防止ということになっていますので、遠慮はしてもらっているんですが、まあまあ間違って乗られる方とか、車椅子の方に付き添いで乗られる方とか・・・

会員:「間違って」じゃなくて、分かっていて乗車するのは良いのかと・・・

T助役:それはもう、こちらはお願いしている方なんで

会員:では、お願いはしているけど、(男性が乗っても)いいと・・・

T助役:いや、いいとは言えませんけど・・・

会員:任意の協力ではないのですか?

T助役:いや、任意の協力です。でも、こちらとしては、いいとは言えませんけど。

会員:ということは、乗るか乗らないかは、こっちが決めてよいわけですね。
「こっちが決めてよい」ということは、乗っても良いということではないのですか?

T助役:まあ、僕らが「いい」とは言えませんけど・・・

会員:ではダメなんですか?

T助役:いや、ダメとも言えないんですけど・・・

会員:どっちなんですか?

T助役:それはご協力を・・・

会員:お願いしているのは知っているんですけども、お願いをお断りする人は、乗ってもいいんですよね?

T助役:お願いを断る人はまあ・・・ちょっと「いい」とは言いにくいんですけど・・・

会員:やっぱりだめなんですか・・・

T助役:でも僕らでは・・・

こんな感じで、T助役も「任意協力」であることは知っているものの、実は男性が乗っても構わないものだとはなかなか認めようとしなかった。

このやり取りを見ているだけでも、女性専用車両が、「実は公共交通機関で本来やってはならないことを、ごまかしながら無理に押し通している代物である」ことが、良くお分かりいただけると思う。

つまり、こんなものをいつまでも続けているほうがおかしいのだが、表向き「痴漢対策」という、もっともらしいうわべの理由で、いつまでもだらだらと続けているのが実際であるといえよう。

それにしても、交通局(大阪メトロ)内で上から「(障がい者や小児以外の)男性が乗車可能であるということを認めてはならない」という指示でも出ているのか?

結局、T助役も最後には「乗車する・しないは乗客の意思に任されているのか?」というこちらの問いに対し、「はい」と言ったので、最後に対応していただいたことに礼を述べて、私達は案内所を後にした。

ホームに戻り、私達は新大阪20:06発の天王寺行に乗車。

新大阪発車時点では、ガラガラに空いていたが、梅田あたりからそこそこ人が乗ってくるようになった。

私達の乗った列車は、そのままなんば駅を過ぎ、大国町・動物園前を経て、結局、復路も声掛けなどはなく、無事に天王寺駅に到着した。

御堂筋線の女性専用車両はなぜ導入されたか

さて、乗車会報告としてはここまでだが、御堂筋線については、触れておきたいことがあるのでここで触れておく。

すでにご存知の方も多いと思うが、「御堂筋線の女性専用車両は、痴漢を注意した女性が、その痴漢男たちによって引きずり降ろされ、レイプされた事件がきっかけとなって導入された」という言説が一部に流れている。

いかにも、「女性専用車両は凶悪な性犯罪を許さない、正義の車両として生まれた(=間違いなく、女性専用車両は性犯罪対策だ)」と言わんばかりであるが、一部マスコミでも、「この事件がきっかけで女性専用車両が導入された」と紹介されたりしたことから、全く何の疑いも持たず信じている人が少なくないと思われる。

しかし、これは本当かどうか、実は疑わしい。

というのは、その事件があったのが1988年で、一方で現在の女性専用車両が京王線で初めて導入されたのが、それから10年以上も経った2000年の年末であり、しかも朝ではなく23時以降の深夜に設定され、その設置理由は「深夜の酔客対策」であった。

それが今では、「痴漢対策」にすり替わり、「深夜の酔客対策」であったことは検索して出てこなく、なかったことにされてしまっている。

御堂筋線に女性専用車両が導入されたのはさらにその後のことで、その頃といえばちょうど、一部の政党・政治家や警察、その他各方面の有力者などが、何とかして鉄道事業者に女性専用車両を導入させようと、全国的に躍起になっていた時期である。

大阪市交通局に対してもこの時期、推進派の議員達が、当時の交通局長のもとを何度も訪れ、「導入はまだですか?」と迫っていたという。

しかし、当時は「1988年の御堂筋線での事件がきっかけ」という話は全く噂になっていなかったにも関わらず、2017年にツイッターで急に広まりだしたことからから考えて、「1988年の御堂筋線での事件がきっかけとなって女性専用車両が導入された」のではなく、導入推進派の誰か(政党とは限らない)が、すでに世間からは忘れ去られていたであろう、30年近くも前の事件を後から引っ張り出してきて、「女性専用車両を増やすため、引き合いに出したのではないか?」と見ることも出来る。

なお、そもそも御堂筋線事件で電車から連れ出された女性の最終的な事件現場が鉄道敷地外の廃ビルであったということから、例え女性専用車両ができたとしても同類の事件が防げるものはない。

つまり、「凶悪な性犯罪を許さない正義として、御堂筋線に女性専用車両が導入された」のではなく、「女性専用車両を増やす理由にするために、この事件が利用された」と言ったほうが近いのではないか?

事件のすぐ後に、御堂筋線で最初に導入され、全国に広まったのならまだしも、事件から10年以上も経って、地域も違い、理由も違う、他社電鉄で導入されだしてから、この事件が出てくるのはおかしい。

ちなみに現在の女性専用車両の導入が一気に進んだのは、(細かく解説し出すとキリがないが、大雑把に言ってしまうと)2000年を過ぎた頃から、当時の国交省が女性専用車両の推進に本腰を入れ出したからである。

そして、当時の公明党が約7万数千筆の署名を集めて、国土交通大臣(当時、公明党の北側氏)に提出するなどして、2005年には首都圏のほとんどの鉄道事業者で女性専用車両の一斉導入が行われるなどした。

当時、本当に御堂筋線事件がきっかけとされていたらどこかのマスコミがそのことを報じてもおかしくないのだが、報じたマスコミは1社もなかった。

2005年の首都圏一斉導入を、【公明党 国交省握り 鉄道「私物化」】のタイトルで報じた、
2005年5月12日付の日刊ゲンダイ紙。

御堂筋線の女性専用車両の導入も、そうした一連の流れの中からのものであり、1988年の事件がきっかけというのは、これらの状況から考えて、ちょっと考えにくいだろう。

もちろん、先にも述べた通り、痴漢対策は当然するべきである。

しかし、それが女性専用車両でなければならないという理由はどこにもないし、また女性専用車両自体が、痴漢対策から外れてしまっているという現実もある。

「任意協力だから、(アパルトヘイトと同様の)差別ではない」としながら、乗客には「任意」であることを知らせず、事実上強制のような扱いをするような、「公共交通機関として、おかしなこと」を、痴漢対策を建前に、いつまで続けるのだろうか?

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