2015年1月 阪急電鉄への意見書(抗議文)提出の報告

当会では、2015年3月のダイヤ改正から、「人にやさしい、魅力ある鉄道サービスを実現するためのサービス向上策」と称して、これまでの京都線に加え、宝塚線にも「サービス目的」の女性専用車を拡大すると発表した阪急電鉄に対し、意見書(抗議文)を提出いたしました。

以下、その詳細の報告です。


阪急に抗議文提出

自ら「サービス目的」であることを平然と明かし、女性専用車両の追加導入を発表した阪急に抗議

女性専用車両は「サービス向上策」とHPで明言

「女性専用車両=痴漢対策」と思っている人も多いかもしれないが、これは誤りである。

阪急は2002年に当時の国交省の社会実験に付き合う形で京都線の特急に女性専用車両を終日導入した。

「そもそも痴漢対策ならなぜ終日実施するのか?」という疑問の声は当時からあったが、その後12年間、阪急での女性専用車両の拡大は無く、当時の国交省の意向に付き合わされる形で仕方なしに導入したものかと思われていたが、突然、この2015年3月のダイヤ改正から宝塚線に女性専用車両を導入することをHPで発表した。

今回は京都線のような終日導入ではなく、平日朝ラッシュ時に新設される梅田行「通勤特急」5本のみの設定だが、問題は時間帯や本数の多い・少ないではない。

阪急はそのHPで何と、【女性専用車両」の導入が、「人にやさしい、魅力ある鉄道サービス」を実現するためのサービス水準向上の一施策であると考え・・・(中略)・・・「女性専用車両」を設定します】などと、女性専用車両が、「痴漢被害が深刻なためにやむを得ず導入したもの」ではなく、サービス向上策の一環であることを堂々と明かしているのだ。
(下の写真)

女性専用車両を「サービス向上策」と、堂々と公言してきた阪急電鉄。
(阪急電鉄HPより)

「同じ運賃を支払えば、誰でも公平に利用出来る」・・・これが、公共交通機関の大原則である。

そして、女性専用車両はそれに真っ向から反するものであるが、そんなものを「痴漢対策のためやむを得ず」ではなく、「サービス向上策」と称して導入するなど、言語道断である。

先にも述べたとおり、阪急は女性専用車両を、「人にやさしい、魅力ある鉄道サービスを実現するためのサービス水準向上の一施策」としているが、同じ運賃を支払っているにもかかわらず、男性であるという、本人の意思では如何ともしがたい、生まれつきの「属性」を理由にして乗車する車両を制限された上、女性専用車両よりも混雑していることが多い非女性専用車両に乗車せざるを得ない男性客にとって、これのどこが「サービス向上策」なのか?

「人にやさしい」というなら、女性専用車両が男性客にどう「やさしい」のか?
女性専用車両を設置しても痴漢件数が減っておらず、痴漢冤罪対策にも全くならないことは、当会が過去何度も述べている通りである。

これでは、阪急の言う「人」とは女性のことであり、男性は「人」のうちに入らないと解釈出来る。

阪急は女性客と同じ運賃を支払って電車を利用している男性客の立場を、どこまでも蔑ろにしているのだ。

これまで女性専用車両の導入に積極的ではなかった阪急も、どうやらここ数年ほどで大きく態度を変えてきたようである。

今から4年前の2011年に、JR西日本が「昼間や休日もラッシュ時と同じくらい痴漢が発生している」などというとんでもない理由づけで、強引に女性専用車両を、土日も含め毎日・完全終日化したことやさらにそれ以降、現在までJR西日本が、「終日実施しているからいつでも乗れる」・「行きも帰りも女性専用車、もう私の習慣です」などと女性優遇策丸出しで、女性専用車の宣伝を何年にもわたり、平然と行い続けていることなどから、その状況を見て、主要3路線がすべてJRとの並行路線である阪急も、おかしな「横並び意識」で、女性優遇策としての女性専用車拡大に乗り出してきた可能性も考えられる。

そして、もしそうだとすれば、自社の社員による痴漢やスカート内盗撮などの不祥事が後を絶たないにもかかわらず、男性客を表向き「痴漢対策」と称して事実上一律に排除しようとする車両を、明らかに営利目的で運行しているようなトンデモ鉄道事業者の後追いなどはしないでいただきたいものだ。

しかし、いずれにしても、JR西日本だけでなく、阪急もあからさまに「サービス向上策」と称して女性専用車両を拡大してきたわけで、当会がいつも言っている、「女性専用車両は痴漢対策ではない」ということを、自ら公表してきたようなものである。

阪急電鉄への意見書と、阪急の回答

当会では1月下旬に、阪急電鉄に対し、以下の内容で意見書(抗議文)を送った。

意 見 書

阪急電鉄株式会社 御中
平成27年1月29日

女性専用車両に反対する会
代表 福山 博
関西本部長 山尾崇人

拝啓。皆様方におかれましてはますますご清栄のこととお喜び申し上げます。

さて先日、貴社より「3月のダイヤ改正から宝塚線に女性専用車両を設ける」という発表がありました。

女性専用車両は当初、「深刻化する痴漢被害から、女性を守るための緊急的措置」として、「本来、同じ運賃を支払えば誰でも公平に利用できる」という、公共交通機関の大原則を覆してでも、やむを得ず導入されたものということになっていたはずですが、貴社のHPを拝見させていただきますと、「女性専用車両」の導入が、


「人にやさしい、魅力ある鉄道サービス」を実現するためのサービス水準向上の一施策であると考え、このたびの宝塚線のダイヤ改正にあわせて同線に新設する「通勤特急」(10両編成)においても、その最後部(宝塚方)の車両に「女性専用車両」を設定します。


とあり、女性専用車両を「痴漢対策のためのやむを得ない措置」としてではなく、「サービス水準向上策」として導入することを明言されています。

一般のサービス業と異なり、極めて公共性の高い交通事業で、乗客を「性別」という本人の意思や努力ではどうすることもできない「属性」を理由に、男性であるというだけで事実上排除することは、それ自体、「人種」という属性で黒人を公共の場から排除し、差別したアパルトヘイトを想起させるものであり、このようなものを、「痴漢対策のためのやむを得ない措置」としてではなく、「サービス水準向上策」として導入するなど、正に言語道断と言わざるを得ません。

しかも、男性客から見れば、同じ運賃を支払いながら乗る車両を事実上制限され、また多くの場合、女性専用車両は一般車両よりも空いており、男性は男性であるというだけでより混雑した車両に乗らざるを得ないわけで、これのどこが「サービス水準向上策」なのでしょうか?

そのようなものを「人にやさしい魅力ある鉄道サービス」と称して導入するのであれば、貴社の言う「人」とは女性客のことであり、男性客を「人」とはみなしていないことになります。
貴社は、女性客と同じ運賃を支払って貴社路線を利用している男性客の立場を、あまりにも蔑ろにしているのではないでしょうか?

貴社の宝塚線へのサービス目的の女性専用車両導入に強く抗議するとともに、今後、JR埼京線で痴漢件数6割減の実績のある監視カメラを、防犯対策として貴社路線でも導入すること、並びに、公共交通機関においてあるまじき、「サービス目的での女性専用車両」の早期撤廃を求めます。

敬具

約1週間後、阪急電鉄から回答が返ってきたが、その内容はふざけているとしか思えないものであった。

以下、その内容。

福山 博様

背景 時下ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。
平素は、阪急電鉄をご愛顧いただきまして、誠にありがとうございます。
早速ではございますが、いただきましたご意見についてご回答申し上げます。

弊社の女性専用車両は、国土交通省が「男女共同参画社会に向けて女性の社会進出を支える環境づくり」の一環として提唱したことを受け、女性のお客様に対する痴漢等の迷惑行為防止に有意義であると判断し、導入いたしました。
現在では多くのお客様からご支持を頂戴いたしております。警察も迷惑行為防止に有効な施策の一つとして導入を提言しており、すでに多くの鉄道会社で導入されるなど、社会的にも定着しているものと考えております。

今般宝塚線におきましても、お客様よりいただくご要望に加えて、世論の動向、他社での実施状況を勘案し、弊社の判断にて女性専用車両を導入することといたしました。

なお、ご提案いただきました車にカメラについては、設置位置の問題、混雑した車内での防犯カメラの有効性等の課題があることから、導入は難しいと考えており、弊社では女性専用車両の導入を進めることとしております。

また、乗車状況調査結果から、女性専用車両と他の車両で乗車率に差はなく、女性専用車両設定による影響はないと考えております。しかしながら、今後もさらに研究をつづけ、お客様のご要望や社会的な要請等を考慮して総合的に判断し、快適性向上に取り組んでまいりたいと考えております。

福山様におかれましては、貴意に副えない回答で申し訳ございませんが、事情ご賢察の上、何卒ご理解賜りますよう、また、今後も阪急電鉄をご愛顧くださいますよう、よろしくお願い申し上げます。

敬具
2015年2月6日

運輸部

まず、組織が出す文書であっても、通常はその組織の責任者等、当該文書について責任を負う者の氏名を記載するのが通常であるが、阪急側の回答者名は無く、「運輸部」としか書いていない。

しかもその上、「女性専用車両を(痴漢対策ではなく)サービス向上策と称して導入すること」についてなど、都合の悪いことにはまったく答えていない。

ちなみに、昨年5月にも当会の会員が、質問状を出し、

  • 「人にやさしい魅力ある鉄道サービス」ということは、痴漢対策ではないと解釈して良いか
  • 「人にやさしい」という「人」とは女性客のみのことを指すのか、違うというなら男性客に女性専用車がどう「やさしい」のか?

などを「個別に回答する」よう念押しに要求したにも関わらず、「誠に勝手ながらまとめさせていただいての回答となります」としたうえ「回答に該当する箇所がないものにつきましては、回答を差し控えさせていただいているものとご理解いただきますようお願い申し上げます」などと言って、肝心のことには全く答えなかったということがあった(2014月5月 阪急電鉄への質問状送付とその回答についての報告 参照)のだが、今回もやはり完全スルー。

>現在では多くのお客様からご支持を頂戴いたしております。警察も迷惑行為防止に有効な施策の一つとして導入を提言しており、
すでに多くの鉄道会社で導入されるなど、社会的にも定着しているものと考えております。

という回答文からも読み取れるように、どうやら阪急は、「世間は女性専用車両支持圧倒的多数である」と思い込んだ上で、反対派から抗議・苦情が出ても、そんなものは問題にならないと考えているようだ(実際に一番多いのは「積極的賛成派」ではなく、「無関心派」と思われる)。

反対派が何を言ってきても都合の悪いことには答えず、適当に返しておけば、「そのうち諦めて何も言ってこなくなるだろう」と考えているのではないか?

これではおそらくこの先も、いくら意見を出したところで対応は同じだと思われる。

これまで、関西本部では、特に態度の悪いJR西日本での乗車会を主に行ってきたが、今後、こちらとしては阪急線において積極的に乗車活動を展開するしかないだろう。阪急に話し合いに応じる気がないのだから・・・

よくネット上などでは、「女性専用車両に男性グループで乗り込んで、乗り合わせた女性客に文句を言ったところで何も変わらない。なぜ鉄道会社に直接文句を言わないのか、そんなことぐらい小学生でも分かりそうなものだが・・・」などと、大真面目に言ってくる者がいるが、これこそまさに「無知であるが故の考え」である。

まず、私達は女性客に文句を言うために乗っているのではない。

女性客のほうから話しかけてきた場合に対応しているだけであって、基本的に乗車会では、乗り合わせた女性客に用はない。

また、男性が女性専用車両に乗車し続ける事によって、

  • 鉄道会社が隠蔽している”女性専用車両の任意性”が社会に知れ渡る
  • 女性専用車両の形骸化が進む
  • 何か問題が起きれば、鉄道会社のほうが対応せざるを得なくなる(=メールや投書での抗議・苦情は、無視しようと思えば出来るが、実際に乗車活動を行われればそうはいかない)

などの効果が期待できる。だから乗車活動に効果がないというわけでは決してない。

一方、電話やメール・投書などの直接抗議で効果を出そうとすれば、(誠実な対応をされないことは承知の上で)女性専用車反対意見を非常にしつこく、しかも大量に出し続ける必要があるだろう。

直接抗議で鉄道事業者を動かそうとすれば、よほどのことをしない限り無理である。

しかも現実には、女性専用車が新規導入・拡大された時に抗議はするものの、「その時だけ」で終わってしまう人が多い。

これでは鉄道事業者に、「女性専用車両を導入して文句が来ても、最初さえやり過ごせばいい」と思われてしまう。

だからこそ私たちは、根気よく定期的に乗車会を行っているのだ。

もちろん、電話やメール・投書などの直接抗議が全く無意味だと言っているのではない。直接抗議も、全く来なくなればそれこそ鉄道事業者にますます「女性専用車両は定着した」と思われてしまう。

だが、世間で思われがちなように、「直接抗議が一番確実で効果的」かと言うとそうではないのである。

阪急の回答に対する反論

最後に、阪急の回答文に対する反論を述べておくことにする。

>今般宝塚線におきましても、お客様よりいただくご要望に加えて、世論の動向、他社での実施状況を勘案し、弊社の判断にて女性専用車両を導入することといたしました。

「痴漢対策」ではなく、「他社との横並び」というのが丸分かりですね。

お上から言われて仕方なく・・・ならば、鉄道事業者もある意味「被害者」ですが、貴社自らそのようになさるのなら、貴社も女性優遇策として女性専用車を推進するJR西日本と同様、「腐敗している」と言わざるを得ません。

>ご提案いただきました車内監視カメラについては、設置位置の問題、混雑した車内での防犯カメラの有効性等の課題があることから、導入は難しいと考えており、弊社では女性専用車両の導入を進めることとしております。

監視カメラと違い、女性専用車両はラッシュ時の安全確保や男性障がい者の乗車に関してなどの問題があり、監視カメラよりも設置位置の決定には慎重・熟考を要するはずです。

監視カメラに「設置位置の問題」があって設置が難しいというなら、宝塚線の女性専用車位置が「最後尾」と、すんなり決まったのはなぜでしょうか?

また、「混雑した車内での防犯カメラの有効性等の課題」と言うなら、すでに監視カメラを設置したJR埼京線では、非常に混雑の激しい路線であるにもかかわらず、「痴漢件数6割減」という結果が出ていることについてはどうお考えなのでしょうか?

「設置位置の問題」とか「混雑した車内での監視カメラの有効性」というのは、監視カメラを設置したくないがための「言い訳」です。

>乗車状況調査結果から、女性専用車両と他の車両で乗車率に差はなく、女性専用車両設定による影響はないと考えております。しかしながら、今後もさらに研究をつづけ、お客様のご要望や社会的な要請等を考慮して総合的に判断し、快適性向上に取り組んでまいりたいと考えております。

私達は、女性専用車両に乗車する活動を何年も前から重ねていますが、JRなど他社では大抵、女性専用車両のほうが明らかに空いています。

貴社路線だけが「特殊」なのでしょうか?

また、仮に貴社の言う通り、乗車率に全く差がなかったとしても、同じ運賃を取りながら、事実上男女で乗車できる車両数に違いを生じさせているということであり、男性側から見てこのようなものが到底「サービス向上策」とは言えないという事に変わりはありません。

>事情ご賢察の上、何卒ご理解賜りますよう、また、今後も阪急電鉄をご愛顧くださいますよう、よろしくお願い申し上げます。

貴社の言う、「事情」とは何でしょうか?

少なくとも、「痴漢被害者のためどうかご理解を」ではありませんね。

「他社との横並びで女性専用車両を導入すること」を”賢察”して、”理解”しろというのでしょうか?

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